実はここまで、それほど4次元で考えてきたわけではありません。

一応は、時間もほかの空間成分(縦・横・高さ)と同じように扱おうとはしていましたが。
まともに4次元というのを扱ってきたわけではなかったんです。

色々情報を見てみますと、アインシュタインさんも最初から4次元というのをがっつり扱っていたわけではないようですね。
頭の中では考えていて、論文中にもそのあたりの事は書いてあるかもしれませんが。
そして、この4次元というのを”まともに”扱おうとしたのは、アインシュタインではなかったんですね。

ヘルマン・ミンコフスキーさんが4次元を扱うことを始めました。

ここで私が使っている”がっつり”とか”まともに”と言うのは、”数学的にスッキリと”という意味です。
ミンコフスキーさんは、アインシュタインの特殊相対性理論を数学的にスッキリさせる為に、ミンコフスキー空間というものを考え出しました。
その時の空間が四次元だったんですね。

そして、その空間をミンコフスキー空間と呼ぶことにしました。
ただ、四次元空間といってもそれなりにきちんとした条件がありまして。

ミンコフスキー空間は、ベクトル空間でなければなりません。

”なりません”と言いましたが、これを決めたのはおそらくミンコフスキーさんです。
その理由は、
”今までに使っていた平面や3次元空間というものが、ベクトル空間だったから”
です。

まあ、平面に対して”空間”という言葉を使うのもなんですが。
数学的には単に”空間とは物の集まり”という意味なんですね。
だから、平面上の点(座標)の集まりを空間と呼んでもいいはずなんです。

まあ、それはさておき。
ここでまた、ベクトル空間という聞きなれない言葉が出てきました。
これが何かといいますと。

ベクトル空間というのは、そこに含まれるベクトルがある規則を満たすような空間のこと。

ここでまた、ベクトルという言葉がバンバン出てますが。
数学においてベクトルというのは、”いくつかの要素をまとめて扱うもの”というだけではありません。
ベクトルと呼ばれるためには、次の性質を持たなければならないのです。

1. 足し算できる。

2つのベクトルの起点を一致させたときにできる平行四辺形の対角が、2つのベクトルの和の終点となります。
とっても、正しいのかどうかわかりませんが。
まあ、感覚でこんなものと思ってください。

2. スカラー倍したベクトルの大きさが、元のベクトルの大きさを同じスカラー倍したものと一緒になる。

スカラーっていうまたわけのわからない言葉が出ますが。
単純に数字と思ってください。
2倍とか3倍とかの、数字です。

といことで、ベクトルとよばれるのも結構大変なわけですよ。
私なんか、高校数学の記憶で、”ベクトルってヤジルシっしょ?”って思いましたけどね。
そんな単純なことじゃなかったってことで。
でもそういえば、あのヤジルシたちも、こういう性質をもってました。
あいつら、なかなかエリートだったのかもしれません。

それはさておき。
ベクトル空間については、その元がベクトルというだけではダメです。
元であるベクトルが以下の性質を持たなければなりません。

3. 足し算は順番を入れ替えてもよい。(和の交換法則)

4.足す順番を変えてもよい。(和の結合法則)

5.ベクトルの和に対してスカラーが分配法則を満たす。

6.スカラーの和に対してベクトルが分配法則を満たす。

7.スカラー倍については順番を変えてもよい。

8.あるベクトルに対して、足した時に0ベクトルになるものがある。

9.あらゆるベクトルに対して、足し算しても元のベクトルと同じになるベクル(零ベクトル)がある。

10.すべてのベクトルに対してあるスカラー倍したときに、元のベクトルになる物(1倍)がある。

いやぁ、いっぱいありますねぇ。
ただ、これ、最初からこう決めていたというよりも、実際の3次元空間(前に言いましたが、当然これもベクトル空間です)について性質を調べたらこうだった、という気がします。

とにかく、ベクトル空間と呼ばれるためには、こんな条件を満たさないといけないんですね。
さて、次に考えないといけないのは、どんな要素を使うか?特に4つ目の”時間に関係する”要素はどうするか?なんですが。

とっかかりは、最初の方で出てきた、光の波面の式「\(x^2 + y^2 + z^2 – c^2t^2 = 0\)」。

特殊相対性理論の出発点は、
”光速度不変” \(\Leftrightarrow\) \(x^2 + y^2 + z^2 – c^2t^2 = 0\)
でした。

ここで、三平方の定理を思い出してみますと、
三平方の定理
\(\alpha^2 + \beta^2 = \gamma^2\) ここで、\(\alpha\), \(\beta\)は直角をなす辺の長さで\(\gamma\)は斜辺の長さ
なので、直交座標xyで、原点\(O (0, 0)\)と点\(A (\alpha, \beta)\)の距離\(\gamma\)は
\((\alpha-0)^2 + (\beta-0)^2 = \alpha^2 + \beta^2 = \gamma^2\)
でした。

さらに、点\(A (x_a, y_a)\) と点\(B (x_b, y_b)\)の距離\(\Delta L_{2D}\)は、
(\Deltaというのは、数学や物理では「差」という意味を持つことが多いです)
\((\Delta L_{2D})^2 = (x_a – x_b)^2 + (y_a – y_b)^2\)
\( x_a – x_b = \Delta x\) \(y_a – y_b = \Delta y\)とすると
\((\Delta L_{2D})^2 = (\Delta x)^2 + (\Delta y)^2\)
となります。

実は3次元になっても同じように書けて、三次元空間xyzにおける距離\(\Delta L\)は
\((\Delta L)^2 = (\Delta x)^2 + (\Delta y)^2 + (\Delta z)^2\)
と書けます。
どうですか?光速度不変の式は、前3つが”3次元空間の点と点の距離”と同じ形ですね。
\(\Delta\)がつく以外は。

そして、4つ目の\(c^2 t^2\)にしても、前の符号がマイナスですが2乗の形ですから、\(ct\)を4つ目の時間に関係する要素にすればうまくいきそうな予感がします。

そして、覚えておいてほしいのですが、
「\(x^2 + y^2 + z^2 – c^2t^2 = 0\)」
の両辺にマイナスを掛けて
「\(c^2t^2 – x^2 – y^2 – z^2= 0\)」
としても、同じ意味を持ちます。
ゆくゆく一般相対性理論あたりでこちらの式を使うことになりますので、最初からこっちで行きます。

最終的に世界間隔を使って、ミンコフスキー空間はどう決められたか?

こんなことをミンコフスキーさんが考えたかどうかはわかりませんが。
ミンコフスキー空間の元であるベクトルは、次の4つの要素を持つことにしました。
\(x\), \(y\), \(z\), そして\(ct\)です。
書く順番は2パターンありますが、ここでは\((ct, x, y, z)\)とします。
こうやって決めた4次元ベクトルを、ベクトルを4元ベクトルといいます。
(4次元ベクトルというのは、要素が4つのベクトルという意味なので、ミコンフスキー空間の元になる4次元ベクトルを4元ベクトルと呼ぶということですね)

4元ベクトルにも種類がありますが、まずは位置ベクトルについて考えます。
原点を基点、位置を示す座標を終点(この点を事象とか世界点と呼びます)にしたベクトルを、その座標(=点)の位置ベクトルといいます。
そして、位置ベクトルの大きさをミンコフスキー空間では、
\(\sqrt{c^2t^2-x^2 – y^2 – z^2 }\)
としました。
3つもマイナスがついて気持ちが悪いというのであれば、
\(\sqrt{c^2t^2-(x^2 + y^2 + z^2) }\)
としてやることで、マイナスは1つになります。
さらにルート中のカッコ内は3次元でのベクトルの大きさになります。
そうなるとルートの中は
<時間関係の要素の2乗>- <空間ベクトルの大きさの2乗>
という感じですっきりします。
ゆくゆく、時空図(ミンコフスキー図)を考えるときは、こうしておくと便利です。
としました。

さらに事象と事象の距離を世界間隔\(dS\)と呼ぶことにすると、以下の式になります。
\(dS = \sqrt{c^2dt^2 – dx^2 – dy^2 – dz^2 }\)
この世界間隔\(dS\)は、ローレンツ変換で変化しません。
(計算するとそうなるのですが、それはまたちょっと別のページでお話しします。)
ローレンツ変換で変化しないということは、慣性系間で共通だということですね。

ということで、この慣性系間で共通な\(dS\)を使って、ニュートン力学における”時間の様なもの”を考えてみたいと思います。

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