微分という言葉を字面から考えると。

微分:微に分ける。
何かを微=小さいものに分けて考える事、というところまでは何とかわかるとして。

  • 何を小さくして考えるの?
  • そもそも、何を考えるの?
  • というか、小さくして何がうれしいの?

という疑問が次々と沸くでしょう。
いえ、沸くはずです。私が高校のころに”沸いていました”から。

このなかで、もっとも大切な、「何を考えるの?」から考えていきましょう。

微分で考えるのは、「変化」です。

微分を考えるのは、何かの「変化」を考えるときです。
変化を考えるというのは、「差」とか「違い」を考えるという事です。
英語で微分は「differential」といいまして、これは違い:differentの派生語となります。

変化というときは、「基準」と「注目するもの」が必要です。
どういうことかというと、
「〇〇がチョメチョメ変化したときに、△△がニャフニャフ変化する」
というのがパターンなのです。
ここでいう、〇〇が基準で、△△が注目するものです。

この注目するものが何であるかというと、実は「未来」や「過去」なんです。
この中でも、「未来」であるこ事が多いですね。

来し方を見て、行く末を考えたいから。

人間いろいろな考え方はありますが。
未来を予想できたらいいな、と思う事、多くないですか?

  • 宝くじの当選番号が予想できたら、大儲けできる

とかね。

そこまで現金ではないにしても、

  • 行きたい場所への到着予想時刻
  • 到着したい時間から予想される出発しなければならない時刻

などは、普段何気なく考えていることだと思います。
こうすることで、将来を予想してスムーズに事を運ぼうとするわけです。

このどちらの例にしても、移動にかかる時間がわかっていて、それを足したり引いたりして到着予定時刻や出発時刻を計算しています。
もし徒歩移動であれば、自分の歩く「速さ」と「距離」を考えて、移動にかかる時間を計算しますね。

こういうやつ、皆さんどこかで見た記憶はないでしょうか。
「A君とB君は周囲が5kmの池の池のほとりにいます。
2人は同時に反対方向に出発しますが、A君は時速2kmで、B君は時速3kmで歩くとします。
2人は何分後にどこで会うでしょうか?」
とかいうやつですね。
おそらく、小学校でこんな問題を見たことがあるのではないでしょうか。
答えは、60分後にA君が2km進んだところ、ですね。
(でも、

  • なんでわざわざ反対方向に二人が進むのか?
  • そもそも、反対方向に進む二人は仲が悪いのか?
  • 仲が悪いのなら、なぜ池のほとりの同じ地点にいたのか?
  • もしかしたら喧嘩でもしたのか?
  • 喧嘩をしたのなら、なぜ家に帰らず、池の周りを回ったのか?
  • しかも二人ともそうしたのなら、もしかしてすごく気が合うのではないか?

等の疑問が次々と沸いてきます。
が、物理(この場合は算数)はその答えを出してはくれません)

オホン!、とにかく、私たちは小学生のころから、この「速さ」「距離」「時間」を考え続けてきたわけです。
そんな身近な「速さ」「距離」「時間」を具体例にとって話を進めます。
(逆にそのころの事なら理解している、という方はしばらく読み飛ばしていただいて結構です。)

知りたいのは、「いつ」「どこに」いるか?です。

「速さ」「距離」「時間」を考えるときに、何が知りたいかというと、
”「いつ」「どこに」いるか?”
です。
それを知るために必要な情報が、「速さ」と、”どこ”までの「距離」になります。

距離はなんとなくわかるとして、速さって何か?ですよね。
実はこの速さの正体が重要なんです。

速さとは、時間に対する距離の変わり方です。

例えば時速4キロメートルといったときに、次のように言い換えることができるでしょうか?
「1時間に4キロメートル進む速さ」
と。
これさえできれば、速さはクリアです。
時速とは1時間当たりの距離なんですね。
つまり、「時間に対する距離の変わり方」という事です。

ちなみに速さが変わらない状態を等速運動といいます。
で、向きも変わらない時には、等速直線運動となります。

そして、覚えているでしょうか?速さは距離÷時間、つまり(位置の変化量)/(時間の変化量)でした。

もしかして、いきなりわかんなくなりましたか?
変化量って何よって感じで。
でも安心してください、変化量というのは単純に「変わった量」の事です。
そのまんまです。
例えば0から5に変わったのなら、それは「変化量が5」ということ。
もし、正の数負の数を覚える中学校の記憶が呼び起せるなら、8から4に変わったときに、「変化量は-4」となります。

さて、ここから先、変化を数字や式だけで追うよりも、もっと強力なツールがあるんです。
それがグラフです。

時間、距離(=位置)、速さの関係をグラフ上で見てみます。(等速直線運動の場合)

グラフ、もっと言うと平面グラフを使って「時間、距離(=位置)、速さ」を見る場合、
横軸は時間、縦軸を位置と取ります。
誰が決めたわけではないのですが、おそらく理由は次の通りでしょう。

・時間は一方通行だから。

あと、横軸は右に行くほど、縦軸は上に行くほど大きな数字になります。
この辺は、言葉でいう文法の様なもので、何人かが共通の事を話すとき、決まりがないと伝わらないからこうしている、と考えてください。
日本語でいう、主語、述語、「てにをは」の使い方、なんかですね。

さて、小学校のころに習ったグラフの書き方を思い出してみましょう。
簡単にするために、
・出発地点の位置を0(もちろん時間も0)。
・当然、速さは変わらない。
とします。

グラフを書くためには、次のうちのどちらかの情報が必要です。
1. ある時間の位置。
2. 速さ
実は、2つとも同じことを表している事にお気づきでしょうか。

1つ前のところで、
「速さは距離÷時間、つまり(位置の変化量)/(時間の変化量)でした。」
といいました。
1. のある時間の位置が分かった場合、大前提で出発地点の位置は0で時間も0としていましたので、
(位置の変化量)と(時間の変化量)が出せます。
ここから「速さ」出せるんですね。
速さがわかっている場合も同じです。
ある学年まで行きますと、数学で単位を使わなくなるのですが、とりあえずここでは時間の単位を「時」、距離の単位を「km」としてやりますと、速さは「時速」になります。
上の方で、
「時速とは1時間当たりの距離なんですね。」
といいましたので、速さ(ここでの時速)がわかると、”1時間後の距離”がわかることになります。
これは「ある時間の距離」がわかっていることと同じですね。
つまり、1. も2. も同じことだったわけです。

さらに思い出してみてください。
大前提が「出発地点は位置0、時間0」の場合ですが、
・グラフの原点(0, 0)と、「ある時間の位置」にあたる点(通る点、なんて呼ぶはずです)の両方を通るように定規で線を引く。
という事をしたはずです。
速さがわかっているのなら、(1, <速さ>)の点が通る点になりますね。

このグラフのすごいところは、
1. ある時間の位置は、横軸の「その時間」からグラフに向けて垂線を書き、グラフとその垂線から縦軸に向けて垂線を書いた時の縦軸とその垂線の交点が、「その時間の位置」になる事。
2. 「ある位置」にいるときの時間は、1.の正反対をしていくと横軸に「その位置にいる時間(時刻)」が出る事。
です。

そうそう、グラフの中の(1, <速さ>)が通る点というのを先ほど言いましたので。
反対に時間が1の時の位置が速さだという事もわかります。
ちなみに、これを傾きと呼んでいますね。

つまり、グラフの中に「時間、距離(=位置)、速さ」がすべて表されている、という事です。

このあたりまでは、小学生高学年から中学生の初めあたりの事でした。次回から「速さが変わる場合」をみていきます。

いかがでしたでしょうか?
訳の分からないものの代表格として、三角関数や因数分解と並んで「三大わけのわからないもの」的な扱いを受けている微分(と積分)ですが。
案外、大昔から付き合いのあるものだったりします。

そして、入り口は、「速さ」という結構身近なものだったりするんですね。
けっして、「訳の分からないもの」でもないですし、「使いどころのないもの」でもないんですよ。

という感じで、微分と親しくなったところで、本当の彼の姿、素顔を見ていきましょう。
その素顔は、やっぱり訳の分からないものなのか、それとも意外に付き合いやすい物なのか?