いろいろな力、といっても中学校の理科でかなり数多く教わっています。

前回でも紹介しましたが、中学校理科で習う力の種類は結構あります。
重力、摩擦力、垂直抗力、磁力などですね。
さらに、力としてではないのですが、ばねの伸びについても勉強しました。
ただ、中学校ではそれらを式では扱わなかったんです

高校からはそれらを式で扱って計算してやろうという事です。
そして、その力を使って運動方程式を立てて、物の動きを計算してやろうという事ですね。
ただ、この中で垂直抗力は「もはやあたりまえのもの」として扱います。
磁力は「電磁気学」という分野(力学の後にする予定です)で取り扱うので、ここでは触れません。
その代わりに、浮力を新しく扱います。

まったく垂直抗力をやらないのもなんですので、簡単に復習しますと。
「垂直抗力とは物が接している面から受ける垂直方向の力」
です。

まあそれは置いといて。
色々な力を、計算で考えようとすると、どうしても「質量と重さの違い」を理解せざるを得ないわけで。
だからそれを最後に学びましょうという事です。

それでは早速。

重力について。

重力については、自由落下の式と運動方程式で力は出せます。
地球上における自由落下の式では、物体にかかわらず、加速度は\(g = 9.8 m/s^2\)でした。
これを使うと運動方程式は
\(F = m \alpha = m g\)
となります。

ただ、重力に関する運動は質量によらず加速度が一定なので、力ではなくて加速度で考えた方がシンプルになる場合もあります。

ちなみに、重力は私の使っている教科書には出てきません。
(当たり前すぎるのでしょう)

摩擦力について。

摩擦には静止摩擦と動摩擦があります。
静止摩擦は読んで字のごとく、「静止しているときの摩擦」です。
動摩擦もそのまんまで、「動いているときの摩擦」です。

簡単なのは動摩擦で、動摩擦係数\(\mu’\)というものを使います。
摩擦が働く面の垂直抗力を\(N’\)としたとき、動摩擦\(F’\)は
\(F’ = \mu’ N’\)
となり、物体の運動している方向の反対向きの力となります。

静止摩擦については、次の通りになります。
1. 物体が動き出すまでは物体にかかる力と同じ大きさで正反対の向きの静止摩擦が働きます。
2.物体が動き出す直前には\(F_0 = \mu N\) \(N\)は垂直抗力、\(F_0\)は最大静止摩擦力、\(\mu\)は最大静止摩擦係数
つまり、物体にかかる力が最大静止摩擦力を越えた瞬間に物体は動き出すわけですね。

ちなみに、この摩擦力は、物が面に接触しているときに考えます。
そして、その面と水平の方向に物が動くとします。
物に働く重力は、面と水平な成分と垂直な成分に分解し、垂直な成分のみが垂直抗力に関係(つまり摩擦力に関係)することになります。

弾性力(ばねの力)について。

中学校ではばねだけを扱っていましたが。
高校からは「弾性体」というもうひとつ大きなくくりで考えます。
”弾”という漢字は「はずむ」と読むように、弾性体とは「はずむもの」という事になります。

中学校でばねを勉強したときに、
1.重り(ただし重さは全て同じ重さとする)の数に比例して伸びる。
2.重りの無い時の長さを自然長という。
3.ある長さ以上に伸びると比例関係がなくなる。
4.縮める場合も同じように考えられる。(あまり問題としては出てこないようです)
という事を学んだと思います。
そして、比例計算で問題を解いていました。(〇:△=1:2の様な感じでしょうか)

これを高校物理の”今の”知識で考え直します。
1.重りの数は重りにかかる重力と同じ意味を持つ。重りにかかる重力はばねを引っ張る力に相当する。よって、ばねの伸びはばねを引っ張る力に比例する。
2.と3.は読み替える必要はありません。
4.縮めるという事はばねを押すという事。どのようにばねを押すかはさておき、押す力に比例してばねは縮む。

中学校の時はばねの長さに注目していました。
高校からは「ばねにかかる力とそれによる長さの変化量」に注目します。
変化量と難しく言いましたが、ようするに伸び・縮みですね。
比例関係という事は一次関数になっているという事で、力がかかっていないときは伸びも縮みもない(というかこの状態を変化量0としている)ということで、式は次の通りになります。

\(F = kx\) \(k\):ばね定数 \(x\):伸び \(F\):力

本来伸びも力もベクトル(つまり方向がある)はずですが、ばねの伸び縮みに関する限り、力を掛けた方向にばねが伸びるので、省略しています。
(つまり、伸びる大きさを計算で出して、方向は後で考えようという事ですね)
当たり前のようにスルーしていますが、伸びと縮みでばね定数\(k\)は同じです。
伸びと縮みじゃ方向が逆じゃないか!とおっしゃるかもしれませんが。
力\(F\)が引くと押すで向きが逆、つまり符号が反対になることで、伸び(縮み)の\(x\)も同じように符号が逆になるので、この式一つで大丈夫なんですね。

ばねに関してはそれだけで1項作るので、ここではこれまでにします。

浮力について。

流体の中で物体が上向きに受ける力の事です。
見慣れない言葉「流体」というのが出てきました。
おそらく普段は「液体」という言葉を使って、「液体中で物が浮こうとする力」という感じで浮力をとらえていると思います。
実生活ではほぼほぼこれでいいのですが、浮力が働くのは液体中だけではないので流体という言葉を使っているのでしょう。

具体的に考えますと、まず「気体」中でも浮力は働きます。
ヘリウムガスを詰めた風船が上昇していくことや、気球が上昇することでそれがわかるでしょう。
あと、液体や気体が”流れる”ことで発生する浮力もあります。
いうまでもなく、飛行機がその例ですね。
凧もそうなんですが、今時の若者は凧揚げしたことあるのでしょうか?
こういう理由で、液体と言わずに「流体」としているわけですね。

それでは四の五の言わずに、核心をついていきます。

・浮力はその物体が押しのけた流体の重さと同じ力となる。
☆これをアルキメデスの原理といいます。
式で表すと
\(F = \rho V g\)
\(F\):浮力(\(N\)) \(\rho\):流体の密度(\(kg/m^3)\)) \(V\):流体に入っている部分の体積(\(m^3\)) \(g\):重力加速度 (\(m/s^2\))

これさえ覚えていれば計算はできますね。
ちなみに、重力加速度は”地球上では”9.8\(m/s^2\)です。

浮力についても色々個別に説明したいので、別項を作って詳しくはそこで語ることにして。
それよりも、ここで質量ではなく「重さ」が出ていることが重要です。
「重さ」を使うので重力加速度が式に入ってくるわけですが。
せっかくの機会なので、今は質量と重さでどう意味が違うのかを見ていきます。

質量と重さはどう違うか? とても簡単に言うと、月面でも変わらないものが質量、月面で1/6になるのが重さ です。

何の話かと思ったかもしれませんが。
月面では重力が1/6になると聞いたことはないですか?
だから、月面ではふわふわしてしまうという話を。

しかし、月面では重い物を動かすのが地上より楽なのかと言うと、そこまで楽ではありません。
地球上と月面上で、同じように滑らかな床を作って、その上の物を押して床面を滑らせながら動かすとします。
滑らかな床なので、摩擦が非常に小さいとします。
この場合、物を動かすにも止めるにも、地球上と月面でそれほど違いは出てきません。
※実際は摩擦に関して垂直抗力 つまり重さ(重力)が関係するので、多少の差は出てきます

月面でふわふわ浮いてしまう事と、滑らかな床面を滑らせながら物を動かす事の違いは、「重力が関係するかどうか」です。
ふわふわするというのは、上向きに掛ける力を同じにした時に、下向きにかかる力(つまり重力)が小さいために上向きの加速度が大きくなり、高いところまで上昇してしまうという事。
滑らかな床面を滑らせるという事は、運動方程式\(m \alpha = F\)に従って加速度を与える事なので、質量\(m\)が同じなら変わらないという事。

まとめますと、重さと言うのは重力によって発生するもので、質量と言うのは「物そのものが持つ」物理量という事です。
そして、地球上、つまり重力加速度が約9.8 \(m/s^2\)の状態での重さと質量が同じになるように決めているという事です。

さて、ここでちょっとおさらいしてみましょう。
宇宙ステーションで物が浮いている映像を見ていると思います。
これ、なぜ浮いているのでしょう?
答えは「物にかかる遠心力と重力が釣り合っているから」です。
遠心力と言うのが気に入らない方は「物と宇宙ステーションがともに自由落下し続けている」と考えても結構です。こちらの考え方は一般相対性理論でいう「等価原理」というのを使っています。
なんにしても「物にかかる重力が消えているように見える」という事で結すね。

ちょっとややこしくなりますが、両方の考え方を見てみましょう。
一つ目の「遠心力と重力が釣り合っている」というのは簡単ですね。
重力と同じ大きさで反対向きに遠心力が働いているという事です。
ちなみに遠心力が働く理由は、「地球の周りを回っているから」です。
二つ目の「物と宇宙ステーションがともに自由落下し続けている」はちょっと厄介です。
そもそも重さが測定するというのは、重力に対抗してそれを支えるのに必要な力を測定していることなんですね。
ところが、宇宙ステーション(を含むすべての物)が同じように自由落下した場合、宇宙ステーションにある秤自体が自由落下しているため、重力に対抗していないことになります。
重力に対抗していないのですから、秤で重さは測れません。
他の秤を使おうなんて思わないでください。ほかの秤も、というかどの秤も同じように自由落下しているのですから。
ということで、宇宙ステーションの中では重さが消えるわけですね。
ちなみに自由落下しているのになぜ地上に落ちてこないかと言うと、地球の周りを回っているからです。

という事で、昔は「宇宙は無重力」なんて言ってましたが、今は「無重量」というようになっています。
重力がないわけではなく、重力が打ち消されて重量=重さがない状態、ってことですね。

とにかく、これから先は「質量」を考えているのか「重さ」を考えているのかに、とても気を使って議論を進めなければなりません。

次回は一連の流れからちょっと外れた「速度の合成と分解」と「力のモーメント」について紹介します。

「速度の合成と分解」は「本当の速度の合成・分解」と「相対速度的な速度の合成・分解」に分かれます。
何のことだかと思って当然ですが、聞いてみれば「なんだそんなことか」と思う事でしょう。

あとこれだけだとボリュームとして足りないので、「力のモーメント」についても紹介します。
こちらもなんだか難しい名前が出てきたな、と思うかもしれませんが。
何のことはない、「てこの原理」です。

ちなみに、この2つは一連の流れからはちょっと外れているので、なんか違和感あるかもしれませんが。
ちょうどよい「閑話休題」的にお送りする予定です。