究極の方程式 \(m \alpha = F\)の\(F\)は合力。力の合成に関するおさらい。とちょっとだけ発展。

力の合成と分解については中学校理科でも習いました。
平行四辺形を使って図で考えいていたと思います。
高校になるとこれを”ベクトル”を使った計算で行う事になります。

と簡単に書きましたが、これをするとなると必要になるのが「三角関数」という数学ですね。
関係しそうなものを抜き出した書くことにしますと。

直角三角形\(ABC\) 角Cが90°というものを考えます。
もちろん数学のお作法通り、頂点\(A, B, C\)それぞれの対辺の長さを\(a, b, c\)とします。
角Aを\(\theta\)としたとき、
\(\sin \theta = \frac{a}{c}\)よって\(a = c \sin \theta\)・・・①
\(\cos \theta = \frac{b}{c}\)よって\(b = c \cos \theta\)・・・②

後必要なのは、
・三平方の定理から\(a^2 + b^2 = c^2\)・・・③
・対頂角は等しい・・・④
くらいでしょう。
あと、三角関数で覚えておくと良い数値として、
\(\sin 45^{\circ} = \frac{1}{\sqrt{2}}\)
\(\cos 45^{\circ} = \frac{1}{\sqrt{2}}\)
\(\sin 30^{\circ} = \frac{1}{2}\)
\(\cos 30^{\circ} = \frac{\sqrt{3}}{2}\)
\(\sin 60^{\circ} = \frac{\sqrt{3}}{2}\)
\(\cos 60^{\circ} = \frac{1}{2}\)
です。
これらは三角定規の2枚の直角三角形に関する三角関数です。

さて、「おいおい、ベクトルの話になるんじゃなかったのかよ!」と思っておられる方、お待たせしました。
ここから、ベクトルの話になっていきます。
そうそう、ここから先「〇〇力」という、まだ説明していない力が出てきます。
その説明は次の回にしますので、今は「ああ、そういうものがよのなかにあるんだなぁ」くらいで流しておいてください。

ベクトルといっても、ここで使うのは平面ベクトルです。なので、その中の使いそうなものだけ抜き出しましょう。

物理数学というテーマでベクトルを取り上げていますが。
そこでは「特殊・一般相対性理論」に向けた内容にしているので、のちに空間ベクトルから4元ベクトルに発展できるようにかなり詳しく説明しています。
(興味のある方は相対性理論にチャレンジをご覧ください)
ただ、ここではそこまで詳しくやりません。

さて、平面ベクトルという事で、\(X – Y\)平面で考えましょう。
※なぜ\(x – y\)平面にしないかと言うと、\(x – y\)平面は物体の位置関係なども含めた平面として使用したいからです。
ベクトルは長さと向きを持てばいいので、つまりどこにあるかはとりあえず考えなくていいので、つねに\(X – Y\)平面の原点\((X, Y) = (0, 0)\)に始点を持っていくことにします。
ここからは状況によりいくつかのパターンが出てきます。
a) 物体が進む方向に平行に\(X\)軸を持っていく。
これは物体が斜面に止まっているとか、斜面を滑っていくというパターンです。
b) 重力が働く方向と平行に\(Y\)軸を持っていく。
これは落下が絡むときや、重力を受けながら力が釣り合っているときのパターンです。

パターンa)の、斜面に物があって滑り落ちたり踏ん張ったりしているときのことを考えます

ではパターンa)から見ていきましょう。
今斜面が水平面となす角を\(\theta\)とします。
その斜面に存在する物体には、
1. 水平面と垂直に重力がかかります。
2. 物体は止まっているか、斜面に平行な方向に動きます。(通常は滑り落ちる方向に動きます。)
3.斜面が滑らかでなければ、物体と斜面の間に摩擦力が働きます。
4.摩擦力が働く場合は、斜面から物体への垂直抗力が関係します。
さて、これらをもとにして考えていきましょう。

まず、重力をそのまま考えることはできないので、分解しましょう。
分解する方向は、\(X\)軸 斜面と平行な方向と、\(Y\)軸 斜面と垂直な方向です。
当然ですが、\(\alpha\)の軸と\(\beta\)の軸は直行します。
この\(X – Y\)平面の原点は、物体の重心\(G\)とします。
さてさらに、物の位置関係を表す平面として、\(x\)軸 水平軸 と、\(y\)軸 垂直軸=重力の働く方向 を考えます。
すると、斜面と水平面がなす角が\(\theta\)ですから\(x\)軸と\(X\)軸のなす角が\(\theta\)になります。
そして斜面を表す軸が\(x – y\)平面の原点\(O\):\((x, y) = (0, 0)\)を通りかつ、物体の重心\(G\)が\(x – y\)平面の第一象限にあるように原点\(O\)をとるとします。
あと3点、重心\(G\)から\(x\)軸に下ろした垂線の足を\(H_1\)、その垂線と斜面(つまり\(X\)軸)の交点を\(A\)、重心\(G\)から斜面(しつこいですけど\(X\)軸)に下ろした垂線の足を\(H_2\)とします。
すると、ここに2つの三角形ができます。
直角三角形\(OAH_1\)と直角三角形\(GAH_2\)ですね。
この時、角\(OAH_1\) = 角\(GAH_2\)です。(対頂角なので)
ゆえに角\(AGH_2 = \theta\)となります。
ここから物体にかかる重力\(\vec{F_G}\)を斜面と平行な成分\(\vec{F_H}\)と斜面に垂直な成分\(\vec{F_V}\)に分解するために、点\(G\)にベクトル\(\vec{F_G}\)と軸\(Y\)で直角三角形を作ることにします。
すると、\(\vec{F_G}\)と\(\vec{F_H}\)と\(\vec{F_V}\)の始点と終点を順に結んでいくと直角三角形になる事がわかります。
そして、その直角三角形の斜辺が\(\vec{F_G}\)、つまり重力のベクトルになるのです。
重力のベクトルの長さは当然重力の大きさですから、\(mg\)になります。
上の方にある①から\(|\vec{F_H}| = mg \sin \theta\)、同じく②から\(|\vec{F_V}| = mg \cos \theta \)となります。
後は垂直抗力=\(\vec{F_V}\) から摩擦力を計算してやればこの物体にかかる力が計算できます。
ネタバレすると、滑り落ちる方向の力(斜面に平行な力の成分)が、最大静止摩擦係数x垂直抗力を越えていれば滑り落ち、超えていなければ止まっています。
滑り落ちる時の摩擦力は大きさが動摩擦係数x垂直抗力になり向きは反対で、止まっているときの摩擦力は滑り落ちる方向の力と等しく向きが反対になります。。

パターンb)の、落下が絡んだり重力が絡みながら力が釣り合って静止しているときのことを考えます。

次にパターンb)ですが、こちらは\(X – Y\)平面を\(X\)軸を水平面、\(Y\)軸を垂直軸と取るだけでいいのでちょっと単純です。
落下がらみの場合、初速度\(\vec{v_0}\)が与えられていて、そのベクトルと水平面(地面)=\(x\)軸とのなす角が\(\theta\)というのもわかっているはずです。
なので、初手は\(\vec{v_0}\)を水平方向成分\(\vec{v_{h0}}\)と垂直方向成分\(\vec{v_{v0}}\)に分解するところから始めます。
このあたり、自由落下の中の「斜め投げ上げ」と同じですね。
後は途中でどんな力がかかるかを、同様に水平方向と垂直方向に分解して足したり引いたりしていけばOKです。

何本かの糸で釣り上げられて静止している場合でも\((X – Y)\)平面の取り方は同じです。
後は、糸のが引っ張る力(糸の張力)の合計が重力と釣り合っていることを使用して問題を解きます。
ポイントは、糸の張力すべてを\(X\)軸方向と\(Y\)軸方向に分けることです。
そして、張力の\(X\)軸方向、つまり水平方向の合力が0になる事と、張力の\(Y\)軸方向の力の大きさが重力と同じになる事で答えを出します。

実は、この\(X\)軸方向と\(Y\)軸方向に分けて考えるというのが、ベクトルの足し算・引き算の考え方なんですね。
実際ベクトルの足し算(引き算はマイナス数値の足し算と考えて)については,
直行座標\(X – Y\)平面においては
\(\vec{A}=(a_1, a_2)\)と\(\vec{B} = (b_1, b_2)\)の場合
\(\vec{A} + \vec{B} = (a_1 + b_1, a_2 + b_2)\)
となります。
ベクトルの\(X\)座標はそのまま\(X\)軸方向の成分で\(Y\)座標はそのまま\(Y\)軸方向の成分で、それらを別々に足し算しているのがわかると思います。
もちろん、直交座標であれば\(x – y\)平面でも同じことが言えます。

余談ですが、座標系(平面)を勝手にとっていいのかというと、いいんです。
今はスマホのマップアプリがあるので、あまり道に迷う事もないとは思いますが。
道に迷って地図を見るときがあったとしましょう。(昔はしょっちゅうだったんですがね)
地図はたいてい上が北になるように書かれているので、普通に地図を見た時自分が北を向いていると地図と周囲の風景が同じになります。
だからといって、必ず自分が北を向く必要はないんですね。
一番目立つ目標物(近くであればお店、遠くであれば山とか高層ビルとかタワーとかでしょうか)を正面にみて、地図もその向きになるように持って(回転させて)、周囲の状況を確認した方がいいことも多いのです。
つまり地図上の東西南北が一つの座標系であれば、自分の前後左右も一つ別の座標系と言えます。
そのうえで自分の前後左右を何か目立つ目標を基準にとって、地図の方向を変えてしまうというやり方もあるんですね。

さて、合力\(F\)が0の時はどうなるのでしょう?運動方程式から見てみましょう。

\( m\alpha = F\)
です。
ここで合力\(F = 0\)ならどうなるでしょうか。
質量\(m\)が0と言うのは非常に特殊(光子などがありますが)なので、ここでは考えないとすると。
そう、加速度\(\alpha\)が0になります。

さて、加速度が0とはどういう状態かと言うと。
速度が変化しない、という事になります。
速度が変化しないという事は、静止(速度が0のまま)または等速直線運動(速度が一定)になるわけですね。

ここで運動の第一法則を思い出しましょう。
「力が加わらない物体は、静止または等速直線運動をする」
でした。

つまり、力が加わっていたとしても、その合力が0であれば力が加わっていない状態と同じになるという事ですね。
これは不思議でも何でもなく、運動方程式をそのように定義したからなんですけど。

ここまでなんの説明もなく重力だの摩擦力だのを使ってきましたが、次の項でそれを改めて説明します。

いや、もう、何の説明もなく重力とか摩擦力とかいう言葉を使ってきました。
垂直抗力とか、最大静止摩擦係数とか、もうやりたい放題でした。
冒頭にも言いました通り、ちゃんと”流して”いただけていたでしょうか。

お約束通り次の項でそのあたりを説明していきます。