似非テンソル、英語でノンテンソル。つまりテンソルの様でテンソルでない物。

ベクトルの微分から出てきたテンソルの条件。
それを満たさないものはもちろんテンソルではありません。
ただ、見かけがテンソルと同じものがあるんですね。
しかも、かなりテンソルっぽいことができると来ています。

似非テンソルでできることは、
・標準テンソル(g〇〇で下付き、上付き、上下付き)を使った添え字の上げ下げ。
これができるという事で、かなりテンソルっぽく扱えるわけですが。
似非テンソルにできない事は、
\(x^{\alpha} _{, \lambda}\)のようなベクトルによるベクトルの微分を用いた添え字の変更。
(上の式で言うと、上付きの\(\lambda\)を\(\alpha\)に変更します)

テンソルと似非テンソルの両方でできることが目立ちすぎて、似非テンソルでやっちゃいけない事もやってしまうのが危ないのでしょうね。
気を付けましょう。

テンソルであることを確かめるもう一つの方法「商の定理」。

商の定理を説明すると、
「\(P_{\lambda \mu \nu}\)は任意のベクトル\(A^{\lambda}\) に対して\(A^{\lambda} P_{\lambda \mu \nu}\)がテンソルになるならば、\(P_{\lambda \mu \nu}\)はテンソルである」
ということです。

「テンソルかどうかわからないものにベクトルをかけた時ものがベクトルなら、元のテンソルかわからなかったものがテンソルである」
と言いうことですね。

証明はとりあえず省きますが、出発点は
\(A^{\lambda} P_{\lambda \mu \nu} = Q_{\mu \mu}\)で
\( Q_{\mu \nu}\)がテンソルであるということから、
\( Q_{\mu \nu} = x^{\alpha} _{, \mu} x^{\beta} _{, \mu} Q{\alpha \beta}\)
というところです。

ここまでの総括。私たちはゴールに近づいているのか?

さてここまでで、ディラックさんの本で言うと24ページまでが終わった事になります。

一応ゴールは一般相対性理論の数式での理解。
その指標として、ブラックホールの理解です。(一番簡単なものにしようと思っています。)
それが終わるのが、80ページです。
あと、56ページですね。
でも、ここまで数式しかやってないような気がして、不安になるかもしれません。
ちゃんと目指す場所に向かっているのだろうか?と。

しかし、私たちは確実にゴールに近づいています。
スタートは平坦な4次元空間、つまり特殊相対性理論の領域でした。
ここでは直行座標系を4次元に拡張して使っていました。

その後、斜交座標さらに曲線座標に展開した(またはこれからしていく)理由は、空間が曲がっているとしたときに、直交座標ではなく斜交座標、さらに曲線座標が便利だから。
そして、「空間が曲がっていて、それが物質(質量)が原因」という事こそ、一般相対性理論の神髄です。

私達は間違いなく、一般相対性理論の神髄に向かって進んでいます。
あと少しだけ、数学的な道具をそろえたところで、本筋に入っていきます。

次回、いよいよ一般相対性理論の神髄の一端である「リーマン空間」が出てきます。

「リーマン空間」、そしてそれを記述する「リーマン幾何学」。
アインシュタインさんは、時空が「リーマン空間」で表せて。
それにより重力を論じることが出来ると考えたんです。

つまり、「リーマンなんとか」を理解すれば、一般相対性理論は理解したに等しいと言えるでしょう。

という事で、次も頑張りましょう。
とは言え、例の苦手な「N次元」という話が出てきます。
でもご安心あれ、それは次回だけの話で、その次の回には消えてなくなります。