多分、ばねは便利なんですよ。問題を作る時にはね。

ばねってね、便利なんですよ、多分。
というのも

  • 力を好きな方向にかけられる
  • 力の大きさも、ばね定数や伸びを変えることで変えられる。
  • 力が釣り合ったところで、伸びが勝手に止まってくれる。

これに比べると重力なんて、向きは変えられないし力は質量で決まってしまうし、窮屈なもんなんです。
ただ、地上での出来事を扱う以上、重力は必ず出てくるので仕方なく、といった感じかもしれません。

実は、ばねの便利さはもう一つあって、

  • いろいろと組み合わせることで、問題を難しくできる。

というのがあげられます。
真っすぐつなげてみたり(直列)、横に並べて棒で結んでみたり(並列)、それを組み合わせたり、何なら壁と壁の間に物を置いて両側からばねをつけてみたり・・・

問題を解く生徒(受験生)たちの苦悶の表情が目に浮かぶようじゃわい。ウェッ、ウェッ、ウェッ・・・

って感じですね。
いや、私はもう初老ですし、試験を受けることはないので関係ないと言えば関係ないのですが。
でも、負けず嫌いなもので、そういう挑戦には断固として対抗したいところです。
我ながら一体何に対抗しようとしているんだろうとは思いますが。

とにかく、出題者の罠をかいくぐり、正解にたどり着くためには、理論をしっかり押さえておかなければなりません。

基本はF=kxですね。

\(F = kx\)
\(F\):ばねが引き戻す力 \(k\):ばね定数 \(x\):ばねの伸び(縮み)
です。
ここでばねが止まっている(伸びたり縮んだりしていない)とすると、ばねの先を引っ張る力とばねが引き戻す力が釣り合っていることになります。
2つの力が釣り合っているという事は、大きさが同じで向きが反対という事ですね。

それではいよいよ、ばねの連結をしていきましょう。

直列にすると、ばねが弱くなる?

いきなり表題が??でしょうけど、そこはおいておいて。
ばねを直列にした場合に何が起こるかを考えてみましょう。

とりあえずばね定数が\(k_1\)と\(k_2\)であるばね\(A\), \(B\)があるとします。
話を簡単にするために、次のような決めごとをします。
・ばねの重さは考えない。
・天井から <ばね\(A\)> – <ばね\(B\)> – <おもり> の順につなぐ。
・重りにかかる重力を\(F\)とする。
・ばねA, Bがそれぞれ\(x_1\)、\(x_2\)だけ伸びて安定したところを考える。
さて、こういう時はいきなり全体を考えるのではなく、下から順に考えていくことにします。

さて、ばね\(B\)についてですが、ばね\(A\)につながっているものの、安定している=止まっているので、状態としては硬い天井にぶら下がっているのと同じです。
ということで、
\(F = k_2 x_2 \Leftrightarrow x_2 = \frac{F}{k_2}\)・・・①
となります。

次にばね\(A\)です。
確かにばね\(A\)を引っ張っているのはばね\(B\)ですが、そのばね\(B\)を引っ張っているのは重りです。
ばね\(B\)の重さは考えないので、結局ばね\(A\)を引っ張っているのは、おもりと考えていいのです。
おもりにかかる重力は\(F\)なので、
\(F = k_1 x_1 \Leftrightarrow x_1 = \frac{F}{k_1}\)・・・②
となります。

ここでばね\(A\), \(B\)を一つのばね\(X\)としてみたときのばね定数を考えます。
ばね\(X\)は力\(F\)で伸びが\(x_1 + x_2\)なのですから、ばね\(X\)のばね定数を\(k_x\)としたとき、
\(F = k_x (x_1 + x_2)\)・・・③
①、②から
\(x_1 + x_2 = \frac{F}{k_1} + \frac{F}{k_2}\)
なので、これを③に代入し
\(F = k_x F(\frac{1}{k_1} + \frac{1}{k_2}) \Leftrightarrow \frac{1}{k_x} = \frac{1}{k_1} + \frac{1}{k_2}\)
(両方向矢印の左から右に行くときは、両辺を\(F \cdot k_x\)で割っています)
となります。

これね、\(k_2 = k_1\)、つまりばね\(A\)2つを直列したとすると、その2つをまとめたばね定数\(k_x\)は
\(\frac{1}{(k_x} = \frac{1}{k_1} + \frac{1}{k_1} = \frac{2}{k_1} \Leftrightarrow k_x = \frac{k_1}{2}\)
となって、ばね定数が半分になるんですね。
つまり、ばねを直列にすると弱くなるんです。

なんか不思議な気もするかもしれませんが、一般的に
・素材とか巻き方が同じであれば、ばねが長くなるほどばねが弱くなる
というものなんです。
だから、「ばねを直列にする」という事が「ばねを長くする」という事だと思うと、なるほどねってなりませんか?
注)”ばねが弱くなる”と言う言葉ですが、ばね定数が小さくなることを言っています。
これは、ばね定数が小さいという事は、同じ力でたくさん伸びることから、そう表現しています。

並列にすると、ばねが強くなる?

次はばねを並列につなぐことを考えてみましょう。
先ほどと同じようにばね定数が\(k_1\)と\(k_2\)であるばね\(A\), \(B\)があるとします。
話を簡単にするために、次のような決めごとをします。
・ばねの重さは考えない。
・天井から重さの無い渡し棒を吊り下げ、ばね\(A\)とばね\(B\)をその棒に吊り下げ、下にも棒を渡して、そこにおもりをつなぐ。
・重りにかかる重力を\(F\)とする。
・ばね\(A\), \(B\)が同じ\(x\)だけ伸びて安定したところを考える。
実は最後の所が大事でして、上の渡し棒と下の渡し棒が傾かないというのが大事です。
なんとなくバランスがとれないとだめなんだろうな、と感じてもらえればOKです。

さてこの時にばね\(A\)には\(F_a\)、ばね\(B\)には\(F_b\)の力がかかるとすると、この2つには
\(F_a + F_b = F\)・・・④
という関係が成り立ちます。
それではそれぞれのばねについてみていきましょう。

まずばね\(A\)については、
\(F_a = k_1 x\)
ばね\(B\)について、
\(F_b = k_2 x\)
となります。
この2つを④に代入すると、
\(k_1 x + k_2 x = (k_1 + k_2)x = F \)
この式から、並列につないだばね\(A\), \(B\)を一つのばねとした時のばね定数は\(k_1 + k_2\)という事がわかります。

これはですね、直列の時と同じように\(k_2 = k_1\)、つまり同じばねを並列にしたと考えると、ばね定数が\(2k_1\)つまり2倍になったことになります。
つまり
ばねを並列にするとばねが強くなる。
と言えます。

おもりの両側に壁があり、両方の壁からばねがおもりにつながっている場合。合成のばね定数は2つのばね定数の和になります。

並列の時もばね定数が足し算になりましたが、それとはちょっとルートが違う感じです。
ばね定数が\(k_1\)と\(k_2\)であるばね\(A\), \(B\)があるとするところまでは同じです。
ここから先を、
・2つの壁の間に重りがあって、両方の壁からばねが出ていて重りにつながっている。
・ばね\(A\), \(B\)とも伸びきっていたり縮みきっていたりしない。
・これからおもりをどちらかに\(x\)だけ動かすが、そうしてもばね\(A\), \(B\)とも伸びきったり縮みきったりしない。
とします。

ばね\(A\)と\(B\)のどちらを縮めるかについては、どっちでもいいんです。
もしかしたらもやもやしているかもしれませんが、とりあえずばねAが\(x\)だけ縮むとして考えます。
おもりに力\(F\)をかけて静止しているとき、おもりにかかっている力がこの力\(F\)と釣り合っていることになります。
おもりにかかる力は、ばね\(A\)がおもりを押し戻す力とばね\(B\)がおもりを引き戻す力の合計となります。
・ばね\(A\)がおもりを押し戻す力 \( = k_1 x\)、
・ばね\(B\)がおもりを引き戻す力 \( = k_1 x\)です。
ちなみに、どちらも方向は一緒です。
よって、
重りにかかる力 \(F = k_1 x k_1 x = (k_1 + k_2) x\)・・・⑤
となります。
つまり、おもりの両側についているばねをまとめて考えたときのばね定数は
\( k_1 + k_2 \)
になるわけですね。

ここで、ばね\(B\)が縮むとしたときにどうなるかと言うと、
・\(F\)が負
・\(x\)が負
になります。(先ほどと逆ってことですね)
そうすると⑤において両辺とも負になるので、結局式としては変わらないことになります。

この3パターンについて、公式で覚えるよりその場で導き出す方が良いとされていますが・・・。並列の時以外は単なる足し算じゃないぞ、という事は覚えておいた方が良いでしょう。

私の持っている参考書でもネットでも、「この3つは公式として覚えない様が良い」となっています。
私もそうは思いますがね。
でも、「ただの足し算になるのは並列の時だけ。あとはただの足し算じゃないぞ。ばねで挟み込むときは結果的に足し算なだけだぞ」というのくらいは覚えておきましょう。

そうでないと、計算しようという気が起きないかもしれないからです。
おそらく実際の問題ではこの3つをうまくミックスしたものが出てきます。
もしかすると、ばね以外の力も働くことを考えるかもしれません。
そうなると、その時、その場で、式を作っていくことが必要になりますから。
その時には、ばねが並列だの直列だのを考えているより、上で行ったような式の計算をしていった方が確実で速いと思いますよ。

次回は浮力について詳しく見ていきます。

次回は浮力について詳しく見ていきます。
これも「色々な力」の中で”詳しくは後で”としたものですね。
浮力はそれだけではなく、圧力とかパスカルの原理やアルキメデスの原理といった様々なものの複合したものでできています。

つまり、前回紹介した「押しのけた流体の重さ(質量ではない)の分だけ浮力が発生する」というのは、そういったあれやこれやを検討した先の結論なわけですね。
ということで、あれやこれやがどういったものだったのかを見ていきたいと思います。