一応、一次関数のグラフで傾きが負の時があったと思います。

中学校の時の一次関数のグラフでですね。
傾き(確かaを使ってましたね)が正の時と負の時をやったはずです。
正の時は右上がり、負の時は右下がりって感じでね。

で、傾きは変化の量ともいわれていて。
x-y座標(xが横軸)であれば、<xの増加量> / <yの増加量> となっていました。
で、右下がり、つまり傾きが負の時と言うのは、”yを増やすとxが減る”と言う状態ですね。

ちなみに、yが位置、xが時間となった場合。
ちょっとややこしいのですが、位置はxを使い、時間はtを使います。
なので、t – x座標でグラフを書くと。
等速(直線)運動の場合、そのグラフは
\(x = at\)
となります。(t=0の時の位置\(x_0\)が0の時)
aが負の時、tの増加につれてxが減少し、t>0の所ではxが負の数になります。

”位置が負”これをどう考えるかというと。
物が数直線上を動いていると考えればよいことに気付いたでしょうか。
数直線は0をはさんで右が正、左が負になります。
よって、tの増加(時間の経過)とともにxが減少するというのは、物が数直線上を左に動いているという事なのです。

でもって、傾きが負という事は、間違った言い方をすると”負の速さ”。
これを間違いにしないために”速度”という言葉を使います。
単純に言うと、速度には向きがあるんですね。
今は正と負の2方向ですが、そのうちにもっといろんな方向を持つようになります。

さて、今までは一次関数で表せる場合のみを考えましたが。世の中もっと複雑ですから。

一次関数で表せるという事は、傾き=速度が変化しないという事でした。
でも、世の中そんなに単純じゃなくて。
速度は当たり前のように変化します。

まあ、自動車に乗っていれば、左右に曲がることもありますし。
そうでなくても、赤信号で止まったり、また信号が青になって走りだしたりしますもんね。
こういう時は”平均の速度”を使うんです。
ある一定時間の間の移動距離をその時間で割るんですけどね。
この移動距離、つまりxの変化量を\(\delta x\)と書いて、tの変化量を\(\delta t\)と書きます。
すると、平均の速度\(v\)<平均>は
\(v\)<平均> \(= \frac{\delta x}{\delta t}\)
と書けます。
あ、気づいたでしょうか、ここで「xの変化量」という言葉が、距離とか道のりの代わりに使われたことに。
前回に「距離とか道のりと言うのはそのうち使わなくなるので、あんまりその違いに気を使わなくてよい」というようなことを書いたと思いますが。
これがそういう事なんです。

さて、ここから少しだけ先取りします。
ここで書いた\(\delta t\)をどんどん小さくしていくとします。
で、”ほぼ0”にしたものを\(dt\)と書くことにします。
すると\(\delta x\)もどんどん小さくなるので、これも\(dx\)と書くことにします。
出来たのは\(\frac{dx}{dt}\)ですね。
これ、微分の書き方です。
読み方は”xのtによる微分”です。(まあ、他にもいろいろ読み方はありますが)
つまり、”速度は位置(x)を時間(t)で微分したもの”となるんですね。

先取りついでに、\(t^n\)のtによる微分を考えます。そして、積分が微分の反対という事を考えます。

\(t^n\)をtで微分すると\(nt^{(n-1)}\)です。
さらに、Aを定数としたときに、\(A t^n \)をtで微分すると\(Ant^{(n-1)}\)です。
Aがそのまま残った形ですね。

ちなみに\(t^0 = 1\)です。
ということは定数Bは、\(B t^0\)と言えますね。
これをtで微分すると、\(0 x B t^{-1} = 0\)となります。
定数項は微分すると消える、ということです。

微分の反対は積分です。
なので、\(t^n\)をtで積分すると、\(\frac{1}{(n+1)} t^{(n+1)} + C\)となります。
Cは積分定数という定数です。
先ほど、微分で消えた定数項が積分で復活したと考えてください。
勘の良い人は気づいたかもしれません。
上の式は\(n = -1\)の時に破綻します。(0で割るのはダメです)
なので、\(n = -1\)の時だけ特別な式を用意しています。
ただ、そのためにはネイピア数というを使って、対数にしないといけません。
よって、ここでは式を書くだけにとどめます。
その式は
<\( x^{-1} = \frac{1}{x}\)の\(x\)積分 = \(log_{e}x\)
です。
ちなみに、\(e\)がネイピア数、\(log\)というのが対数ですよという意味になります。

さて、等速直線運動で位置の時間微分が速度というのを確かめます。

等速直線運動で位置の時間微分、(\(\frac{dx}{dt}\))を確かめてみます。

物理においては、あるアルファベットが特別な意味を持つことが多くあります。
例えば、時間は\(t\)(時間の英語であるtime:タイム の頭文字)、速度は\(v\)(速度の英語であるvelocity:ヴェロシティー の頭文字)などですね。
位置はなぜか\(x\)で表すことが多いです。
そして、\(a, b, c\)は係数を表すことが多いんですよ。

さて、等速直線運動、つまり速度が変わらない運動を考えてみます。
すると、
\(x = vt + b\)
の様になります。
(bはt=0の時の位置で定数。\(x_0\)と書かれることも多い)
この式に早速微分というのを使ってみましょう。

もちろんtで微分します。両辺を。
tで微分というのは、実は\(\frac{d}{dt}\)をつけるのと同じです。
すると左辺は\(\frac{dx}{dt}\)で見たことのある形になりました。
ということで、このやり方が正しいだろうという自信を深めつつ、右辺を見ると、
\(\frac{d}{dt} (vt + b) = \frac{d vt}{dt} + \frac{d b}{dt}\)
となります。
上の式の右辺第1項は、vが定数(等速直線運動なのでv:速度 は定数)なので
\(v \frac{dt}{dt}\ =v\)
となります。
第2項はbが定数なので、定数をtで微分することになるから、0になります。
以上をまとめると、
\(\frac{dx}{dt} = v\)
となって、等速直線運動では常に速度がvということが出てきました。

等速直線運動で微分に慣れたところで、「速度が変化するときの微分」を考えます。
が、その時には「速度の変化の仕方」に名前を付けないといけません。
(不便なので)

速度の変化の仕方を「加速度」と呼ぶことにします。アルファベットのaを使うことが多いのですが、係数のaと紛らわしいこともあるので、ここではギリシャ文字のα(アルファ)を使うことにします。

位置の変化の仕方を速度と名付けました。
その流れで、速度の変化の仕方を「加速度」と名付けました。
速度で\(v\)をよく使うように、加速度では\(a\)をよく使います。
ただ、一般的な係数でも\(a, b, c\)というのをよく使うので、その\(a\)と紛らわしいと思いますので。
ここではギリシャ文字の\(\alpha\) アルファを使います。

当たり前のように変化の仕方という言葉を使っていますが。
これは「時間変化」という意味です。
時間変化だから、時間で微分しているわけですね。

ということで、加速度=速度の時間変化=速度の時間微分 ということで式を書いてみます。
\(\alpha = \frac{dv}{dt}\)
ですね。
ちなみに、
\(v = \frac{dx}{dt}\)
ですので、
\(\alpha = \frac{dv}{dt} = \frac{d}{dt} \frac{dx}{dt}\)
となります。
この最後の式については「位置を時間微分したものを時間微分する」=「位置を時間で2回微分する」と読み替えることができます。
別の所で「時間で微分する」というのは\(\frac{d}{dt}\)と書くことをお伝えしました。
これを基に、「時間で2回微分する」というのを、\(\frac{d^2}{dt^2}\)と書くことにします。
これにより、
\(\alpha = \frac{dv}{dt} = \frac{d}{dt} \frac{dx}{dt} = \frac{d^2x}{dt^2}\)
となりました。

さて、速度が変わらないのを等速(直線)運動と言いましたので、加速度が変わらないのを「等加速度運動」と呼ぶことにして、考えていきます。

等加速度運動。これがなぜ重要かというと、身近な運動がこの運動だから。
その運動は「落下」です。
ここでガリレオさんのピサの斜塔における落下実験(おそらく創作)を考えます。

ガリレオさんの実験で、重い物も軽い物も、同じように落下することがわかりました。
同時に同じ高さから落とせば、地面に同時につく、という事ですね。
それでは速度が同じかというとそうではないのは見ていればわかります。

落下においては、速度はどんどん速く=大きく なります。
普通に「加速がつく」なんて言いますよね。
その上で同じように動く(同時に同じ高さから落とせば同時に地面につく)という事はどういう事でしょう。

これは「速度の変化の仕方 = 加速度」が同じという事ですね。
つまり、重い物も軽い物も、同じ加速度を受けるんです。
とはいえ、それは「同じように加速度が変化する」という事かもしれませんよね。

なので、加速度を測ってみました。
昔の人がどうやって加速度を測ったのかはわかりませんが、おそらくいろいろな高さから落としてみて、地面に着くまでの時間を測っていったのだと思います。
こうすることで速度の変化の仕方を計算しますと、面白いことにある一定の値だったのです。
それが、重力加速度\(g = 9.8 (m/s^2)\)です。
まあ、9.8ではなくてその後にずらずらと数字が並ぶんですがね。

お、いきなり加速度の単位を\(m/s^2\)と書きましたが。
前回、単位の次元について話したことがあります。
「速さは距離を時間で割るので、\(m/s\)ですよ」的なことを。
同じように加速度は「速度を時間で割るので\(m/s^2\)になる」わけです。

え?「時間で微分じゃないのか」ですか?
ここでよく思い出しましょう。
微分と言うのは「小さな変化量 \(\delta\)で割るという事でした」
加速度でいえば、
\(\frac{\delta v}{\delta t}\)ですね。
つまり「小さな速度変化量」を「小さな時間変化量」で割るという事。
つまり、時間で割るという事だったんですね。
元々速度の単位が\(m/s\)なので、さらに時間で割ることで\(m/s^2\)になったという事です。

脱線しましたが、落下運動は「等加速度運動」になります。

等加速度運動について微分・積分を使ってみてみます。

落下(自由落下)の加速度は重力加速度\(g\)で、加速度が変化しない等加速度運動でした。
これに限らず、加速度が一定の運動について、微分と積分を使って考えていきます。
今回はこの一定である加速度を\(\alpha\)として話を進めます。

加速度は速度を微分したものでした。
なので、加速度を時間で積分すると速度になるはずです。
\(v = \alpha t + v_{0}\)・・・①
\(v_{0}\)は時間0における速さで、初速度と言ったりします。

※日本語には時刻と時間という2つの言葉があります。
「今午後3時」といったとき、これは時刻になり、「今から午後5時までは2時間」といったときの「2時間」が時間になります。
変化量である\(\delta\)を考えると「時間」になるわけですね。
ただ、英語では時間も時刻も同じtimeで表すようなので、そこまで厳密に言い分けなくてもいいのかもしれません。
そんなことから、ここでも時間と時刻は区別せず、全て「時間」と呼ぶことにします。

さらに、位置を微分すると速度になるという事から、速度を積分すれば位置になるという事になります。
これを式にすると、
\(x = \frac{1}{2} \alpha t^2 + v_0 t (+ x_0)\)・・・②
となります。
ここで\(x_0\)は時間0における位置で初期位置なんですが。
なぜか高校物理では初期位置\( = 0\)としているようです。
おそらく3番目の大事な式のためにはこうである必要があるのと、もう一つ理由があるのですけど。
今はそれは置いておいて。

①と②から\(t\)を消去すると、3番目の大事な公式が出しましょう。
私の持っている教科書では「自明」という感じだったので、この機会に計算してみましょう。

加速度\(\alpha\)の等加速度運動で3つ目の大事な式導出

①より
\(t = \frac{v – v_0}{\alpha}\)
これを②に代入して、
\(x = \frac{1}{2} \alpha t^2 + v_0 t \\
= \frac {1}{2} \alpha {\frac{v – v_0}{\alpha}}^2 + v_0 \frac{v – v_0}{\alpha} \\
= \frac{(v – v_0)^2}{2 \alpha} + \frac{v_0 (v – v_0)}{\alpha}
= \frac{(v – v_0)^2 + 2 v_0(v – v_0)}{2 \alpha}
= \frac{(v – v_0)(v – v_0 + 2v_0)}{2 \alpha}
= \frac{(v – v_0)(v + v_0)}{2 \alpha}
=\frac{v^2 – v_0^2}{2 \alpha} \)
よって、
\(v^2 – v_0^2 = 2 \alpha x\)・・・③
③は時間が関係しない計算の時、例えば位置\( x = x_t\)の時の加速度、などの時に使用します。
(加速度が\(\alpha _t\)の時の位置は、などもこの式を使います)

さて、ここまでちょっと先取りして微分・積分を使ってきましたが、それを使わずにいろいろと説明するのが本道です。
それを無視しちゃいけないですから、位置・速度・加速度を微分・積分を使わずに説明していきましょう。
ここで大活躍するのがグラフです。

v – tグラフを使った、位置・速度・加速度の説明。(かなり長いですよ~)

使うグラフは「v – tグラフ」というもので、縦軸にv(速度)、横軸にt(時間)を取ったものになります。
ここで等加速度運動だった時にこのグラフの式を書くと
\(v = \alpha t + v_0\)・・③
vが速度、\(\alpha\)が加速度、\(v_0\)が初速度(時間0での速度)になります。
つまり、一次関数=直線ですね。

中学数学で一次関数のグラフを学んだ時に、「(y)切片」と「傾き」というのがあると習ったはずです。
この切片が\(v_0\)で、傾きが\(\alpha\)すなわち加速度なんですね。
さて、ここで、\(\delta\)を使った速度の式を思い出しましょう。

\(v = \frac{\delta x}{\delta t}\)・・・④
でしたね。
もうちょっと詳しく見てみますと、vはtの関数になります。
こういう時に\(v(t)\)と書いたりします。(よくあるのはxの関数を\(f(x\)書く形ですね)
そして、t=bの時の速度を\(v(a)\)と書きました。
これを使って③④を書き直すと、
\(v_{(b)} = \alpha b + v_0\)・・・⑤
\(v_{(b)} = \frac{\delta x}{\delta t}\)・・・⑥

さて、ここでこのグラフのtについて、0からbまでを10等分したとします。
それぞれの点を\(c_0, c_1, c_2, \ldots, c_8, c_9, c_10\)とします。
(ちなみに、\(c_0 = 0\)で、\(c_10 = b\)です)
10等分なので、それぞれの隣の点までの間はすべて、\(\frac{b}{10}\)で同じになりますね。
\(t\)について0から\(t\)までを10等分したものが十分に小さいかどうかが問題ですが、ここでは十分に小さいとします。
すると、\(\delta t = \frac{b}{10}\)とできます。

さて、これについてまず⑤から見てみます。
\(b = c_0, c_1, c_2, \ldots, c_8, c_9\)
としたときのそれぞれの\(v\)は、
\(v_(c_0), (v_(c_1), (v_(c_2), \ldots,(v_(c_7), (v_(c_8), (v_(c_9)\)
となり、全て③の直線上の点になります。
そこから右隣りの点までの距離は全て\(\delta t = \frac{b}{10}\)
上の各点(10個)からt軸に下ろした垂線と、その足から左に\(\delta t = \frac{b}{10}\)伸ばした線でできる長方形はの面積は、
\(v_{(b)} \times \delta t\)
になります。
これは、⑥の両変に\(\delta t\)を掛けたものの左辺に等しくなっています。
つまり、
\(v_{(b)} \delta t = \delta x\)
ここでの\(x\)も\(t\)の関数なので、\(x_{(b)}\)と書けます。よって、
\(v_{(b)} \delta t = \delta x_{(b)}\)

ここで、\(t=0(c_0)\)から\(b(c_10)\)まで、前述の長方形の面積を足し合わせた時どうなるかを考えると。
直線③とt軸の間で、t=0(c_0)からb(c_10)までの面積にとても近くなります。
今、10等分していますが、これを20等分、100等分、10000等分・・・と細かくすれば、その差はほとんどなくなります。
一方で、\(v_{(b)} \delta t = \delta x_{(b)}\)については、\(t=0(c_0)\)から\(b(c_10)\)までの移動距離になります。
t=0の位置が0ですから、移動距離はそのまま位置になります。

では、先ほどの「直線③とt軸の間で、t=0(c_0)からb(c_10)までの面積」というのがどうなっているかを考えましょう。
これは2つの図形に分けられます。
1つ目は「高さ(v軸)が\(v_0\)で幅(t軸)がbの長方形」。・・・⑦
2つ目が「\(v=v_0\)と直線3と\(t=b\)で囲まれた3角形」。・・・⑧
⑦ = \(v_0 t\)
⑧ = \(\frac{1}{2} \alpha b\)
足し算して、
\(\frac{1}{2} \alpha b^2 + v_0 t\)
よく見てください。②の右辺で\(t\)を\(b\)にした時の形になっているでしょ。
そして、この面積は、tがbの時の移動距離\(x_{(b)}\)に等しかったわけです。
以上より、②の等式になる事が、微分・積分を用いることなく説明できました。

実は、〇〇等分と言うのを限りなく多くしていくというのが微分の考え方で、長方形を足し算していくというのが積分の考え方、何です。
だから、微分・積分という言葉を使っていないだけで、考え方はがっつり使っています。

さて、これまで物1つ落とすことなく物の動きを考える準備をしていました。次の章でようやく物を落としたり投げ上げたりすることをします。

物の動きを考えると言いながら。
今まで、物を1つ落とすという事すらせずに、道具を準備することに専念してきました。
それにより今や準備は完全に整ったと言えます。

という事で、次章より「物をおとし」たり「物を投げ上げ」たり「物を横に投げ」たりしてその動きを見ていきます。

それではまた、次のおもしろ不思議でお会いしましょう。