まず、前回出てきた式のおさらいです。

前回出てきた式は3つ
\(v = \alpha t + v_0\)       ・・・①
\(x = \frac{1}{2} \alpha t^2 + v_0 t\)・・・②
\(v^2 – v_0^2 = 2 \alpha x\)    ・・・③
※\(v\)と\(x\)はtの関数なので、本来\(v(t)\)や\(x(t)\)と書くべきですが、そこは省略します。

ただし、前提条件として、「t=0の時の位置を0とする」です。
あと、時間の単位を秒(s)、距離(位置)の単位をメートル(m)と統一すると便利です。
そうした時、重力加速度は\(9.8 m/s^2\)になります。

それではいざ、物の動きを見ていきましょう

初めての運動は、基本の「自由落下」です。

「高さ\(h\) \(m\)の所から、そっと物を落とす。」というのを考えようと思ったのですが。
いっそ、「物を落とすところを\(0\) \(m\)として」そこからどれだけ動くかを考えるのがいいでしょうね。
「高さ\(h\) \(m\)」の件は最後に下駄をはかせればいいので。
あと、空気抵抗は無視できる範囲で考えることにしましょう。

さて、計算とか式を立てる前に、どんな風に動くかを想像してみます。
物を話した瞬間の速度は\(0 m/s\)で、その直後からだんだん加速していくでしょう。
さて、これを今度は数値や式で表現していきますよ。

自由落下において、必要な情報はほとんどありません。
(空気抵抗を無視できるなら)
物の形、色はもちろんの事、質量もいらないんです。
質量とは何かというと、簡単に言うと重さなんですがね。
地球上でも月の上でも変わらない「重さ」なんです。
これについてはまた、別の機会に詳しく説明するとして。

自由落下に関する式は次の2つです。
\(v(t) = g t \)
\(x(t) = \frac{1}{2} g t^2\)
ただし\(g\)は重力加速度で、\(9.8 m/s^2\)です。
その関係で、tの単位は秒(s)で、x(t)の単位はメートル(m)です。
当然v(t)の単位はメートル毎秒(m/s)ですね。
ただ、このままですと、x(t)が下に行くほど大きくなってしまいます。
なので、ちょっと細工して。
\(v(t) = -g t\)・・・①
\(x(t) = -\frac{1}{2} g t^2\)・・・②
とマイナスをつけてやります。
時間とともに、下向き(マイナス方向)に速さが増していくという事ですね。
当然、位置も下向きに動くんですね。

そっとはなす時が済んだので、次は投げ上げるのを考えます。

次は自由落下のなかで、最初に上向きの速度がある状態(=投げ上げ)を考えます。

物をそっとはなす次によくありそうな動きとして、物を上に放り投げるというのが考えられます。
いわゆる「投げ上げ」ですね。
長い物を持つと、ちゃんばらしたくなるように。
人はボールを持つと上に放り投げて受け取りたくなるような気がします。
そのくらい身近な問題なんですよ。
それはさておき。

さて、普通に放り投げる場合は、スナップを効かせたりいろいろありますが。
今回は全くそういう余計なことをせず、しかも空気抵抗も無視できるとしましょう。
投げ上げる方向は、正確に真上とします。
さて、どんな動きをするのかを想像してみましょう。
物が手を離れた瞬間からものは上向きに進みつつ速度が遅くなるでしょう。
そして、あると事で速度が一瞬0になって、次の瞬間から自由落下と同じ運動になるでしょう。

さて、このあたりからちょっと前もって考えておかなきゃならないことがありまして。
それは、「上と下、どちらを正としますか?」ということです。
先ほどやった「そっと手をはなす」場合、話した場所を\(h m (h > 0)\)にすることを考えて、上を正・下を負としました。
そのために、式にマイナスを付け加えたんですね。
しかし、実はもう一つ方法がありました。
それは、加速度を負にする方法。

重力加速度は\(g = 9.8 m/s^2\)としていましたし、これを変えたくはないですね。
なので、加速度を\(-g\)としてやるのです。
形としては、式にマイナスをつけるのと変わらないのですが、マイナスをつける理由がよりはっきりした感じがします。
今回はこの「加速度を\(-g\)にする」というやり方で進めます。
この方法により、物が時間0にある位置より上が+・下が-になります。

初速度(時間0の時の速度)を\(v_0 m/s\)とすると、①,②の式から
\(v = -g t + v_0\)・・・④
\(x = \frac{1}{2} (-g) t^2 + v_0 t\)・・・⑤
です。

まず、④に注目しましょう。
手を離れた瞬間の速度は\(v_0\)で、反対向きの重力加速度で減速します。
そして、\(v = -g t + v_0 = 0\)すなわち\(t = \frac{v_0}{g}\)・・・⑥の時に一瞬止まって、そこからは前にやった自由落下になります。
次にこれをふまえて⑤を見ます。

④に注目してわかった、\(t = \frac{v_0}{g}\)の時に位置がどこかと言うと、この\(t\)を⑤に代入して、
\( x = /frac{1}{2} (-g) \frac{v_0^2}{g^2} + v_0 \frac{v_0}{g}= \frac{v_0^2}{2g}\)
です。

さらに⑤について変形すると
\(x = (\frac{1}{2}(-g) t + v_0)t\)
になります。
\(x=0\)とすると、\(t = 0\), \(t = \frac{2 v_0}{g}\)・・・⑦

⑥, ⑦(2つ)のtを並べてみます。
\(0, \frac{v_0}{g} , \frac{2 v_0}{g}\)
どうですか?3つが等間隔なのがわかりますか?

さらに調べると、\(x=0\)だけでなく、\(0 \le x \le \frac{2 v_0}{g}\)の範囲では、
(1) 上昇中にそのxになる時間 (2) 最も高くなる時の時間 (3)下降中にそのxになる時間
が等間隔なことがわかります。
地味ですけど、ちょっと後に大事になってくるので、頭の片隅に置いておいてください。

次は、自由落下の中で、下向きの初速度がある場合(=投げおろし)です。

次は投げおろしになります。
実は、こっちの方が簡単ですね。
ただ、こっちの場合は下向きをプラスにすることが多いので、そこだけ違います。

具体的に言いますと、
\(v = g t + v_0\)・・・⑧
\(x = \frac{1}{2} g t^2 + v_0 t\)・・・⑨
直前に出てきた投げ上げの式で、加速度をプラスにしてしまうだけです。
投げ上げの時の様に動く向きが変わることはありません。

この話はここまでで、横方向に水平発射を考えます。

ここでついに2次元の運動です。水平発射の運動について取り上げます。

今まで物体は数直線上を動いていました。
つまり1次元の運動ですね。
今回からは、ついに斜めの動きを考えることになります。
このためには2次元つまり2つの軸で考える必要があります。
後は、2つの軸をどのようにとるかですね。

今、物を位置\(0\) \(m\)の所から、水平方向(つまり真横)に速度\(v_0\)で発射したとします。
(空気抵抗は考えないとします)
「物の重さとかは関係ないのか?」ですか?
ありません。だって発車した時から自由落下っぽい動きになるので。
ただ、真横に発射しているので、全く同じではないわけです。
どう違うのかはおいおい説明するとして。
「真横って右か左かどっちなの?」というところから考えましょう。

結論から言うと、「右でも左でもいいけど、右方向をプラスにすると後々便利」という事です。
これはですね、「数直線は右に行くほど大きくなるようにすることが、暗黙の裡の了解になっている」からです。
さて、ここから具体的に物の動きを見ていきます。

物体を真横に(今回は右に)水平発射した瞬間とそのちょっと前を考えます。
これは、物体が摩擦の無い床面を水平方向に速度\(v_0\)※向きは右水平 で等速直線運動していて、t=0秒の瞬間に床がなくなった、という状態と同じです。
逆に、物体が床から飛び出た瞬間をt=0秒としたと考えてもいいでしょう。

この物体について水平方向だけ見ると、「何も起こっていない」状態です。
なにもされていない物体は、静止または等速直線運動をし続けます。
よって、「水平方向に限っては、物体が\(v_0\)で等速運動する」という事になります。
つまり、
水平方向の速度はtに関係なく\( v_0\)
水平方向のt秒後の位置は\( v_0 t\)
となります。

今度は垂直方向です。
これについてはある意味簡単で、もし\(v_0\)が0であればどうかというのを考えます。
もし\(v_0\)が0であれば、「物体をそっと手放した」のと同じになります。
これは自由落下になります。つまり、
t秒後の垂直方向の速度は\( -g t\)
t秒後の垂直方向の位置は\( -\frac{1}{2} g t^2\)
になります。

ここで、2次元の軸を水平方向と垂直方向に決めます。
水平軸をx、垂直軸をy、xはさっきの通り右にいくほど大きく、yは上にいくほど大きくなるようにします。
すると、物体の\(t\)秒後の速さ\((v_x(t), v_y(t)\)と位置\((x(t), y_t)\)については
\((v_x(t), v_y(t)) = (v_0, -gt)\)
\((x_t, y_t) = (v_0 t, -\frac{1}{2} g t^2)\)
となります。

最後に斜め投げ上げ。速度の分解がキーポイントです。

斜め投げ上げと水平発射は、基本的に同じです。
ただ、初速度が斜め方向なので、始めに初速度を垂直方向と水平方向に分解する必要があります。
そして水平方向の軸をx、垂直方向の軸をyとし、x軸は右に行くほど大きく、y軸は上に行くほど大きくなるとします。

さて、今回は斜め方向に初速度があるという事で、どのくらい斜めかを言わないといけません。
そのために地面と投げ上げ方向のなす角を\(\theta\)として話を進めます。
(この角度を「仰角」と呼びます)

初速度\(v_0\)で右斜め上に角度\(\theta\)で投げ上げる、という状況ですね。
ここで速度を考えるための専用平面\(X – Y\)を考えます。
(X軸は位置を表す平面のx軸と、Y軸は同じくy軸と平行とします。ただし、どちらの軸も単位は\(m/s\)です)
初速度\(v_0\)をX軸とY軸に分解するために、
1) ベクトル\(\vec{v_0}\)の原点を\((X, Y) = (0, 0)\)つまり\(X – Y\)平面の原点に取ります。
2) ベクトル\(\vec{v_0}\)の長さ\(| \vec{v_0} |\)を\(v_0\)にします。
3) ベクトル\(v_0\)とX軸のなす角度を\(\theta\)になるようにします。
この時に、
4) ベクトル\(v_0\)の矢印の先をAとすると\(A = (X(v_0), Y(v_0))\)にあります。

ここで、AからX軸に下ろした垂線の足(Aから真っすぐX軸に下ろした線とX軸との交点)をHとしたときに。
\(X – Y\)平面上に直角三角形OAH(\(OH \perp AH\))ができます。
上の3)から、\(\angle AOH = \theta\)で、\(| \vec{v_0} | = OA = v_0\)となります。
さらに4) から\(OH = X(v_0), AH = Y(v_0)\)になります。

三角関数の定義から、
\(\frac{OH}{OA} = \frac{X(v_0)}{v_0} = \cos \theta \leftrightarrow X(v_0) = v_0 \cos \theta\)
\(\frac{AH}{OA} = \frac{Y(v_0)}{v_0} = \sin \theta \leftrightarrow Y(v_0) = v_0 \sin \theta\)
ここで\(X(v_0)\)が\(v_0\)のx方向の速度、\(Y(v_0)\)が\(v_0\)のy方向の速度、になります。

x方向、つまり水平方向は直前の水平発射の時と同じく等速運動になるわけですから、t秒後の速度と位置のx方向部分(x成分といいます)については、

等速直線運動ですね。

y方向部分(同じくy方向成分と言います)については

真上の投げ上げですね。

ちなみにもうひとパターン、「斜め投げ下ろし」がありますが、y成分が真っ直ぐ下への投げ下ろしになるだけなので、省略します。

先程速度を分解しました。そう言えば、中学校で分解したものがありました。それは「力」です。

中学校の時の理科を思い出してください。
力を分解したり合成したりしたはずです。
二つの力(矢印で書いていたのを覚えているでしょうか)を2辺にする平行四辺形を書いたり。
これで合成していましたね。
反対に一つの力を対角線とする平行四辺形を書いたり。
これで分解してました。

この矢印をベクトルと呼びます。
注意、実はこの矢印は「ベクトルの一種」です。
他にも「矢印で表せないベクトル」が、大学に入ると出てきます。
この辺りのも物体の運動、つまり力学に関する物理量はベクトルで表されるものが多くなります。

力、加速度、速度、そして位置。
こういったものがベクトルで表されることになります。
よく見ると、上にある4つは全て関係しているんですね。
位置の変化の仕方が速度、速度の変化の仕方が加速度。
そして、ちょっと先取りになりますが、加速度を変化させるものが力です。

ちなみに、ここからの物理ではベクトルを結構使うことになります。
今は力学についてですが、将来的に電磁気学などでも出てくるはずです。
今のうちにベクトルに慣れておきましょう。

それはさておき、ベクトルの特徴は、
1.長さで大きさを、矢印のむきで方向、書き出しで始点(力の場合は作用点)を表す。
2.ベクトルそのものとしては、平行移動しても変わらない。
3.複数のベクトルの、始点と終点(矢印の先)をくっつけていくことで、足し算ができる。
というところですね。

最後にもう一つ、力が関係しない運動を学んでおきます。「跳ね返り」です。

ここまで、力が関係しない(本当は関係していますが、計算上考えなくてよい)運動を見てきました。
重力が絡んだものなんですけどね。
最後にもう一つ、力が関係しない運動を学んでおきましょう。

その運動は「跳ね返り」に関するものです。
この運動に関係するのは、弾性係数\(e\)と衝突時の速度(もちろん方向付き)です。
\(e\)は\( 0 \le e \le 1\)になるもので、物質と壁によって決まる数値となります。

ぶつかったときの運動については意外と簡単で、
「ものが壁にぶつかった時、物の速度を壁と垂直な成分と壁に並行な成分に分解して、壁に平行な成分は変化なし、壁に垂直な成分は\(e\)をかけて向きを反対にする」
だけです。

ちょっと式で書くと、
衝突の直前に
\(\vec{v} = \vec{v_v} + \vec{v_h}\) (ただし\(\vec{v_v}\)は壁に垂直な方向の速度、\(\vec{v_h}\)は壁に水平な方向の速度とする)
の時、衝突後は
\(\vec{v’} = -e \vec{v_v} + \vec{v_h}\)
となります。

次回から少し順番が変わりますが、いきなり運動方程式を紹介します。

教科書ではこの先、「いろいろな力」というものを学んだあとに、運動方程式を学びます。
でも、私としては、力と運動の関係式 つまり運動方程式を学んだあとにいろいろな力をやった方がいいのではないかと思っています。

なので、いきなり運動方程式を紹介して、そのあとにいろいろな力について学んでいこうと思っています。
とはいえ、運動方程式の前に少しだけ、中学校で習った「力について」を復習する予定です。