微分と言うのは結局のところ「変化の仕方」でした。

前回までで言えたことは、

  • 微分とは「変化の仕方」

ということ。

でも、実はそれ以外にもいろいろと大事なことを述べてきたんですよ。
その一つが「変化の仕方 =変化の割合」と言うのは、

(変化する量の変化量)/(変化させる量の変化量)

という事です。

”変化変化とうるさいんじゃボケェ”
という声も聞こえてきそうですが、まずは落ち着いてください。
距離、時間、速さで考えれば大丈夫ですから。

この場合、「変化の仕方」=速さ、「変化する量」=距離、「変化させる量」=時間 となります。
どうですか?なんとなくつかめてきましたか?
この辺で、ちょっと1文で書いてトドメを刺してみましょう。
「時間とともに変化する距離について、その変化の仕方が速さ」
という事になります。

それのどこが大切かというと、「割り算=分数」だという事。

微分は基本、分数の形なので、約分ができたりします。

距離をL、時間をt、速さをVとしますと、
\(V = \frac{dL}{dt}\)
と表せると前回に言いました。
これは分数の形で等式になります。
まず等式の性質として、両辺に同じものを掛けても等式が成り立つので、両辺に\(dt\)を掛けます。
\(Vdt = \frac{dL}{dt} dt\)
右を見ると、分母分子にdtがあるので、約分できます。
\(Vdt = dL\)
\(d\)がついている意味というのが、「0ではないけど、0にとっても近いすごく小さな値」というものです。
という事は、「\(dt\)というのは、なんだかんだ言って時間の事だし、\(dL\)というのは、なんだかんだ言って距離の事」と言えます。
なので、先ほどの約分までした式を日本語で表すと、
「速さに時間を掛けると距離になる」
という、小学校のころに習ったことになるわけですね。

ちょっと変わった分け方で書かれることもあります。ここでは”中途半端なぴ分”と呼ぶことにします。

約分の所の前のところで、「両辺に・・・」といった部分は、\(\frac{dL}{dt}\)を\(dL\)と\(dt\)に分けるという事ですが。
これとはちょっと違う、変わった分け方もあります。
その分け方とは、
\(\frac{d}{dt}\)と\(L\)です。

「おいおい、\(L\)はいいとして、\(\frac{d}{dt}\)の分子にある\(d\)ってなによ?」
ってなりますよね。
はい、それはとても自然な反応です。
が、ここはひとつ、分子の\(d\)と分母の\(dt\)は分けない方向で考えてください。

\(\frac{d}{dt}\)をひとまとめにして、
「tで変化する何かについて、とっても小さいtにおける変化の仕方を考えましょう」
という意味にするのです。
これの名前ははっきりしてないのですが、取りあえず私のサイト中では「中途半端な微分」と呼んでおきます。

こういう書き方をして何が便利かというと、「tで変化するものであれば、何についてもこの書き方を使える」という事です。
もちろん、t以外の事もあります。
例えば、x, y, zについて、とかね。

次はその辺について話していきます。
が、その前に全微分と偏微分について話します。

変化するものが複数あったとして、あるものについてだけ微分するのを偏微分といいます。

何のことかと思うかもしれませんが、先ほどのx, y, zについて微分するというのを例にとります。
これは、空間の中での注目する量(値とか数とは限りませんが)の変化量を見るという感じになりますね。
ある注目する量について、x, y, z, の3方向について変化の仕方を見るってことです。

ただね、坂道で動いた時、よっぽどうまく動かないと、高さも同時に変わりますよね。
(こうならないのは、坂道自体が平らで、高さが変わらない、つまり坂の勾配に直角な方向に動いた場合だけです)
一般的にzを高さ方向として考えて、x, yを水平方向と考えた時、
つまり、xとz, yとzが関係しているという事を示しています。
ここから自然にxとyも関係していることになります。
つまり、x, y, zはお互いに関係しているわけです。

全微分と言うのは、この関係も全部含めて考える微分です。
注目する量について、例えばx方向の変化を見ようとしたときに、それによって自動的に変化するy, z方向の変化も考えるという事で、ちょっと考えたらわかる通り、ややこしくなるんです。
この形式の微分である目印は\(d\)がくっついていることです。
今まで書いてきた微分は全て全微分だったわけですね。

このややこしさをうまく処理する一つの方法が、「xをほんの少し動かすだけなら、yとzは動かないとしていいんじゃない?」という考え方です。
こうしてやることで、yとzは定数として考えられるので、とても楽になるんです。
こういう考え方を何かに偏って微分するということで、偏微分といいます。
偏微分である目印は\(\partial\)がつくことです。
この\(\partial\)の名前はいろいろありますが、一番簡単に「デル」と呼ぶといいでしょう。

で、もちろんですが、\(\frac{\partial}{\partial x}\)という書き方も、全微分と同様にあります。
意味もほぼ同じで「とりあえずx以外は動かないものとして、そのxがとっても小さく動いた時のある量のとっても小さい変化」となります。
この書き方について考えてみますと、”ある量”というのが決まらないと何も決まらないんですが。

次は、さらに摩訶不思議な部分について考えます。

ベクトルの要素に中途半端な微分を使えるんです。

例の\(\frac{\partial}{\partial t}\)のようなものを、ベクトルやテンソルの要素に仕えるんですね。
ここでは電磁気学とかで使う形に持っていくために、
\(\frac{\partial}{\partial x}, \frac{\partial}{\partial y}, \frac{\partial}{\partial z}\)
で考えますと、
\( (\frac{\partial}{\partial x}, \frac{\partial}{\partial y}, \frac{\partial}{\partial z})\)
というものが作れます。
と言いながら、最初からこういうものを考えていたというわけではないんです。
話の流れでこういうものを考えるといろいろと計算が楽だよ、ということで出てきたものなんですね。
その話の流れというのは、電磁気学のある部分を例にとると、こんな感じ。

電磁気学で、電束密度\(D_{(x, y, z)}\) 注)ここから先この話が続く間は、\(D\)と書いたら\(D_{(x, y, z)}\)のこととします。いちいち書くのが面倒なので について、
\(\frac{\partial D}{\partial x} + \frac{\partial D}{\partial y} + \frac{\partial D}{\partial z} = \rho(x, y, z)\)
ただし、\(\rho(x, y, z)\)は電荷密度で、スカラーです。
となるということがわかりました。
※(本当は、もう一つ、時間tの関数でもあります。がここではちょっと省略します)
これをちょっと工夫すると、
\( (\frac{\partial}{\partial x}, \frac{\partial}{\partial y}, \frac{\partial}{\partial z}) \cdot D\)
と書けますね。
つまり、ベクトルの内積です。
なら前のもベクトルとして名前を付けてしまおうということで、
\( (\frac{\partial}{\partial x}, \frac{\partial}{\partial y}, \frac{\partial}{\partial z}) = \nabla\)
\(\nabla\)は「ナブラ」と読みます。
としてやりました。

こんなことしていいのかというと、いいんです。
じゃあ、この「ナブラ」にどんな意味があるかというと、私自身、実はよくわかっていません。
ただ、普通のベクトルではありません。なので、大きさとか向きとか考えても意味がないです。l
となると、例の反変ベクトルか?というと、そう言い切れないところもあって。

実際、
\(\frac{\partial D}{\partial x} + \frac{\partial D}{\partial y} + \frac{\partial D}{\partial z} = \rho(x, y, z)\)
という式を見ると、ベクトルの各要素に係数をつけて、スカラー(数字)にしているので、線形汎関数と言えます。
線形汎関数の係数部分をベクトルにしたので、「ナブラ」は双対ベクトルと言えます。
私に言えるのはここまで。
この双対ベクトルが反変ベクトルと言えるのかは、申し訳ないです、わかりません。

なんにせよ、こんな微分の仕方もあるということを覚えておいてください。
このあたりをわかったうえで、一般相対性理論に戻りましょう。