浮力について語る前にまず、「圧力」と「水圧」いうものを見ていきましょう。

圧力と言うのは一般生活では人を委縮させる力の様な感じで使われます。
プレッシャーなんて言われることもありますね。(まあこれpressureという「圧力」という意味の英語そのままなんですが)
これは多分、気体を縮めるときにかける力とか、縮んだ気体が膨らむときに出る力という元々のイメージを利用しているのでしょう。

物理(というか自然科学)においては、気体や液体にかかる力とかそれから受ける力を示しています。
ただ、気体や液体は固体と違って形を持たないので、「面で」力を掛ける感じになります。
ということで、圧力は「単位面積当たり(\( m^2\))の力(\(N\))」というものになります。

で、気体に関して圧力と体積と温度にある法則があるんですね。
ボイル・シャルルの法則といいます。
一応言葉で説明すると「気体の体積は温度に比例して圧力に反比例する」となります。
で、これは化学で習うんですね。(現役の高校生の方は楽しみにしていてください。)
まあ、いずれ化学もシリーズでお伝えするつもりですが。
それは当分後です。
なぜなら、化学は私の専門分野なので、いまさら高校化学をやってもそれほど萌えないもので。

閑話休題。
何が言いたかったかと言うと、気体は圧力によって体積が変化するという事と、それを扱うのは化学だということ。
では液体はと言うと、圧力による体積変化はないとしてよいくらいに小さいものですし、一応物理で扱います。
ので、ここからは液体で圧力を考えていきます。

っとその前に。
とりあえず、液体代表として水を、状況代表として地球表面を仮定します。
水の質量は\(1cm^3\)あたり\(1g\)より\(1000kg/m^3\)ですし、地球表面における大気圧は\(1 \times 10^5 Pa\)ですね。
(大気圧を\(1 \times 10^5 Pa\)としましたが、正確には\(1.013 \times 10^5 Pa\)です。これを1気圧とか1atmといいます)
ちなみに\(1 Pa = 1 N/m^2\)なので、1気圧というのは\(1m^2\)の中に\(100000N\)という強大な力がかかっていることになります。
もっとわかりやすく\(1kg \approx 10N\)と考えると、\(1m^2\)の中に\(10000kg = 10ton\)という超強力な力がかかっていることになります。

それでは早速、水圧を考えていきましょう。

水圧の考え方は、「水が動いていない=力が釣り合っている」というところからです。

水圧と言うのは、水中のある深さのところの圧力です。
圧力の単位が\(Pa = N/m^2\)なので、\(1m^2\)の面を考えることにします。
水深\(d\) \(m\)のところにある\(1m^2\)の面について、
・その面で水が動いていない = その面で力が釣り合っている
とすると、
「その面の上にある水の重さと、その面で水を押し上げている力が釣り合っている」
という事になります。

今考えている面の上にある水の量は、底面積が\(1m^2\)で高さが水深\(d\) \(m\)である立体の体積になります。
よって、\(d\) \(m^3\)ですね。
ゆえにその体積の水の質量は、\(1000 \cdot d\) \(kg \)になります。
地上での重力加速度を\(g\) \(m/s^2\)とすると、質量が\(1000 \cdot d\) \(kg \)の水の重さは\(1000 \cdot d \cdot g\) \(N\)になります。
今、底面積が\(1m^2\)の状態を考えているので、その場所での水圧は\(1000 \cdot d \cdot g\) \(Pa\)になりこれが深さ\(d\) \(m\)の水圧となります。
ちなみに、重力加速度はどのみちそのまま公式に出てきますので、ここでは重力加速度は\(g\)のままで話を進めます。

とりあえず、底面積\(S\) \(m^2\)で高さが\(d’\) \(m\)の正四角柱を水深\(d\)に沈めたときの各面にかかる圧力を考えます。ただし\(d’ \lt d\)つまり正四角柱は完全に水没しているとします。

 

まず、パスカルの原理というの説明します。
すごく単純に言うと
「水圧は面の向きに関係なく、水深によってきまる。」
ということです。
ここから言えるのは、正四角柱の4つの側面は、同じように水圧がかかることになります。
正四角柱が変形しないと考えると、4つの側面が受ける水圧は互いに打ち消しあって釣り合うことになります。

ここで底面と上面にかかる圧力を考えます。
まず底面について。
底面の水深は\(d\) \(m\)の水圧は\(1000 \cdot d \cdot g\) \(Pa\)。
よって底面積\(S\) \(m^2\)にかかる力は、
\(1000 \cdot S \cdot d \cdot g\) \(N\)
になります。
次に上面について。
上面の水深は\(d-d’\) \(m\)でそこにかかる水圧は
\(1000(d-d’)g\) \(Pa\)
になります。
正四角形なので、底面積と上面積はおなじなので、そこにかかる力は
\(1000(d-d’)g \cdot S\) \(N\)
になります。

\(0 \lt d’\)なので、\((d-d’) \lt d\)になります。
ここから、底面の受ける力の方が大きいことがわかります。
よって、<水面の受ける力> – <上面の受ける力> \(= 1000 \cdot S \cdot d \cdot g – 1000 \cdot S(d-d’)g = 1000 \cdot S \cdot g \cdot d’\)となります。

ここでこの式を見ていきましょう。
\(d’\)は水没している正四角柱の高さ。
\(S\)は水没している正四角柱の底面積。
よって\(Sd’\)は水没している正四角柱の体積で、これを\(V\) \(m^3\)とします。
\(1000\)はどこから来たかと言うと、水の密度\(1000\) \(kg/m^3\)でした。
これを\(\rho_{water}\)とします。
これにより、浮力\(F_{float} = \rho_{water} V g\)となり、前に出てきた式そのままになりました。
これをさらに読み解くと、その正四角柱が押しのけた水(体積が\(V\))の分の質量(質量 = 密度 x 体積 =\(/rho_{water} V\))に働く重力となり、すなわち正四角柱が押しのけた分の水の重さ(重さとは、質量に働く重力の事)となります。

もっと複雑な立体などうするか?先ほどの底面積\(S\) \(m^2\)の\(S\)をとっても小さくして、その複雑な立体を埋め尽くすようにするといいですね。

すごく細い正四角柱で複雑な立体を埋め尽くすと考えるわけです。
それらすべての極細正四角柱に働く浮力を足し合わせれば、元の複雑な正四角柱の浮力になりますよね。
で、その極細正四角柱の体積を足し合わせると、元の複雑な立体の体積になるのですから。
結局、どのような形状でも浮力\(F_{float} = \rho_{water} V g\)
になります。

さらに、流体が水でなければどうか?
そう、流体の密度が変わるわけですね。
その流体の密度が\(\rho\)ならば、浮力\(F_{float} = \rho V g\)になります。

さらに、重力加速度が変われば?
例えば月面ではどうなるか?
と言えば\(g\)が変わるわけですね。
月面は地表の1/6の重力加速度なので、浮力も1/6になるわけです。
地球上では水に浮いていいたものが、月面では沈むのか?というとさにあらず。
物体に働く重力も1/6になるので、地上で水に浮いていたものは月面でも水に浮きます。

そうなると、水底に沈んだものには浮力は働かないのか?>ほぼ確実に働きます。

物体の底面に水がなければ浮力は働きません。
ただ、よっぽどのことがなければ物体の底面に水が潜り込みます。
そう、物体と水底が密着しているのでなければ。

物体と水底が密着するというのは、接している面が完全に一致した形状という事です。
その状態で水を完全に追い出すように物体と水底が接触する必要があります。

もし問題でそのような記述があれば例外的に浮力は働きませんが、そうでなければ普通に水が物体の底面下に潜り込んで浮力が働くと考えるべきでしょう。

次回から「仕事とエネルギー」について学んでいきます。

仕事とエネルギーはともに単位が\(J\) (ジュール)です。
\(1J = 1N \cdot m\)です。
この2つの関係はどういうものか?

さらに、エネルギーはいろいろな種類があります。
それらのエネルギーの間でどのような関係が見られるのか?

そういったことを学んでいきましょう。