最初にお断りしますが、ディラックさんの「一般相対性理論」とは正反対から議論に入っています。

ここから先は、ディラックさんの「一般相対性理論」を参考に話を進めますが。
この本とは正反対から議論に入っています。
特に、計量テンソルと、反変ベクトルの入り方が、正反対です。

多分ディラックさんは、正門から正々堂々と入っていて。
私は姑息にも裏門から忍び込んでいるのでしょう。

しかし、入ってしまえば後はおんなじです。
入り口は気にせず、議論を進める予定です。

物理数学「テンソル」をある程度学んで戻ってきました。

とりあえず、テンソルと言うのが、

  • ベクトルの直積で出来ていて、
  • そのベクトルの個数が階数と呼ばれていて、
  • そのベクトルには反変と共変があって、
  • 反変の添字は上、共変の添字は下に書く。

と言うことがわかっているとします。

その上で、\(dS^2\)を見てみます。

普通に考えられる反変ベクトル\(A^i\)と、それに内積することで\(\boldsymbol{A}\)の大きさの2乗になる共変ベクトル\(A_i\)について考えていました。
そして反変ベクトルに掛け算して共変ベクトルにする、つまり\(A^0\)はそのままで、\(A^1\)~\(A^3\)の符号を反対にする行列を、計量テンソルと呼んでいました。
※この辺で、ちょっと整理です。
\(A^i\)と書いた時、\(i = 0 ~ 3\)となって、\( (A^0, A^1, A^2, A^3)\)になるので、\(\boldsymbol{A}\)のこと、つまり反変ベクトルだよ、とします。
\(A_i\)と書いた時も同じように共変ベクトルになります。
ただ、書き方は本来、反変ベクトルは縦書き、共変ベクトルは横書き、という違いがあります。
とどのつまり、添え字がアルファベットやギリシャ文字の時はベクトル、数字の時はベクトルの成分、となるんですね。

行列なので2階のテンソルになりますね。
後は、半変成分と共変成分がどうなっているかが問題です。
先に答えを言っておきますと、2つとも共変成分となります。
つまり\(g_{ij}\)となります。
これを半変ベクトル\(A^i\)に掛け算したら、共変ベクトル\(A_i\)になるというように\(g_{ij}\)を考えたので、
\(g_{ij}A^i = A_j\)
となります。

え?最後の\(A_〇\)の所で、iとjが入れ替わっている、ですか?
それではここに入る文字のそもそもの意味を考えてみましょう。
ここの文字は”\(〇=0, 1, 2, 3\)という意味でした。
なので、ここがiだろうがjだろうが、単独であれば関係ないんです。

ではどういうときに意味を持つかというと、2つ以上の文字が使われたときです。
\(g_{ii}\)としてしまうと、\(g_{00}, g_{11}, g_{22}, g_{33}\)しか表していないことになります。
\(g_{ij}\)と違う文字を使うことで、\(g_{00}, g_{01}, g_{02} \cdots g_{42}, g_{43}, g_{44}\)の16通りを表せるわけですね。

話が少しそれましたが、\(g_{ij}\)によって、\(A^i\)を\(A_j\)に変える式ができました。

そういえば、gijは2階のテンソルなので、行列で表せるのでは?→できそうですが、必要でないときはやらないことにします。

確かにそう思えます。
でも、一方で行列は「1階反変1階共変」のテンソルなのでは?とも思います。
ということは、計量テンソルは「2階共変」なので、行列にならないような気がします。

そもそも、反変ベクトルは縦ベクトルで、共変ベクトルは横ベクトルでした。
でも、行列に縦ベクトルをかけても、縦ベクトルにしかなりません。
でも、ここでは反変ベクトル=縦ベクトルが計量テンソルをかけることで共変ベクトル=横ベクトルになっています。

実はここの所はまだ私の中でも理解できていません。
何となくですが、「この世ではない軸で行列になっている」ように思っています。
こう書くと「なんと非科学的なんだ!」とおしかりを受けそうですが、一応言い訳しておきましょう。

こういう、「隠された何か」が数学的に導入されるというのを、私たちは何回か経験しています。
おそらく最初の事例としては、「負の数」ではないでしょうか?
もしかしたら、「0」かもしれませんね。
両者とも、リンゴの個数というので考えると、無理です。
「0」であれば「空っぽのお皿」、「負の数」であれば「借り物のリンゴ」の様な感じで、それまでとは違う考え方をしないと理解できません。

もう少し後であれば、虚数もそうですね。
2乗して-1になる数字を仮定するというあれです。
虚数は、実数による平面、空間、どちらにも現れません。
虚数が現れるのは、「虚軸」においてで、いわば隠された軸になります。
その虚軸1本と実軸1本で表される複素平面と呼ばれるものが、虚数も含めた数の世界(複素数といいます)における私たちの世界における数直線の様なものとなります。

つまり、私の中では2階共変の内の1個の共変は「私達には見えない軸」で、それと私たちに見えるもう1個の共変によって行列になるのではないかってね。
すみません、これは私のイメージなので、多分数学的には正しくないでしょう。
とにかく皆さん自身で、なんとか
「2個の共変成分を持つテンソルと反変ベクトルの掛け算で、共変ベクトルになる。その時の計算は、2階共変テンソルをあたかも普通の行列として反変ベクトルに掛け算して、できた縦ベクトルを横ベクトルに変換して共変ベクトルにしたものになる」
というのを納得しておいてください。

壮大に話がそれましたが。
ここでは、そういうものだとして話を進めます。
そして、ここから先は、どうしても計算が必要な時以外は、2階のテンソルを行列で表したり、ベクトルを要素で表示(縦だの横だのに要素を並べる書き方)はしないことにします。

ということで、ここからは添え字とその上・下で計算を進めます。

先ほどの、
\(g_{ij}A^i = A_j\)・・・①
を基本として考えます。
さらに、\(E_{ij}A^i = A^i\)となるような\(E_{ij}\)を考えます。
実はこの\(E_{ij}\)は行列でいう単位行列というもので、ベクトルに掛け算してものとベクトルになるという行列になります。
ちなみに、この\(E_{ij}\)は、\(E_{ij} = E_{ji} \)という性質を持ちます。
ここで注意ですが、この書き方はこのページだけのものになります。
次の項では、別の書き方になります。
なので名前もつけていません。

ここで、\(X_{ij} \cdots (X_{ij})^-1 = E_{ij}\)という\( (X_{ij})^-1\)を考えて、
\( (X_{ij})^-1 = X^{ij}\)
と書くことにします。
実はこれ、行列でいう「逆行列」に相当します。

ここまで決めた後で、①式の左から\(g^{ij}\)を掛けるとどうなるかというと、
\(g^{ij} g_{ij} A^i = g^{ij} A_j\)・・・②
左辺は、
\( g^{ij} g_{ij} A^i = E_{ij} A^i = A^i \)
となりますので、②式は、
\( A^i = g^{ij} A_j\)
となります。
ここで注意ですが、本当はこれをしてはいけません
本当は、「一つの項で、同じ添字が3回以上出てきてはいけない」と言うルールがあるからです。
この場合は、添字のiをkなど別のアルファベットに変えてから計算します。
これについては、次の回にしますので、今回の計算は、方便であり正しい(けど見た目はそれ程変わらない)方法が別にあるという事だけ覚えておいてください。

これで、\(g^{ij}\)によって共変ベクトルが反変ベクトルになるという事になりました。

あれ?\(g_{ij}\)で共変ベクトルから反変ベクトルに、さらに反変ベクトルから共変ベクトルになるのでは?→特殊相対性理論の4元ベクトルにおいては、そうなるんです。

実はそうやって行っていたころ、私達は「平坦な空間」について考えていました。
なので、\(g_{ij} = g^{ij}\)になっていたんですね。

でも、そうでないときには、
\(g_{ij} \neq g^{ij}\)
となります。

ところで、特殊相対性理論の世界というのは、「平坦な4次元空間」(平坦なミンコフスキー空間)です。
つまり、特殊相対性理論の範囲では、\(g_{ij} = g^{ij}ij\)なんです。
では「そうでない時」とはどんな時か?
それはまさに「空間がゆがんでいるとき」ですね。
そう、ついに特殊相対性理論から一般相対性理論に進んでいく時が来たのです。

今までのなじみある「平坦な」空間で使っていた”直交座標系”。
これからは、「ゆがんでいる」空間で使用する”曲線座標系”を代わりに使用していきます。
が、いきなり曲線座標系に行くのではなく、いったん「斜交座標系」挟んでいく予定です。