光速度不変のほかに仮定していたのは、”すべての慣性系で物理法則が同じように成立する”ということ。

最初の方で書きましたが、特殊相対性理論で前提としたのは次の2つ

1. 光速度不変
2. すべての慣性系で物理法則が同様に成立する

でした。
ローレンツ変換までは1.の光速度不変から導き出されました。
もう一つの”物理法則の普遍性”からどのようなことがいえるのでしょうか。

ここでいう物理法則というのは、ニュートンの運動の3法則と運動量保存法則だと理解しています。

一応、言葉で書くと次の4項目となります。

  1. 力が働かない物体は、静止しているものは静止し続け、動いているものは等速直線運動をする。
    ->慣性の法則=第1法則
  2. 物体に力が働くと、その力に比例し、その質量に反比例した加速度が生じる。
    -> 運動の法則=第2法則
  3. 物体\(A\)が物体\(B\)に力を及ぼした時、物体\(A\)は物体\(B\)から同量の大きさでかつ正反対の力を受ける。
    -> 作用・反作用の法則=第3法則
  4. 運動量\(p=mv\)を定義したとき、いくつかの物体が影響しあっている状況で外から力が加わらないのであれば、運動量の総和が保存される。
    -> 運動量保存則

そして、これらが成立しないように見えた場合、何かを変える必要が出てくるということですね。
そう、ガリレイ変換の代わりにローレンツ変換を導入したように。

まず、速度の合成から。

静止している\(K_0\)と、\(K_0\)に対して速さ\(V_1\)で動く\(K_1\)と、\(K_1\)に対して速さ\(V_2\)で移動している\(K_2\)を考え、その\(K_2\)内で静止している点を考えます。
ここでは、\(K_2\)の原点\(O_2\)をその点として考えます。

ガリレイ変換では、\(K_0\)から見た\(O_2\)の速さは単純
\(V[O_2 ガリレイ] = V_1 + V_2\)

しかし、ローレンツ変換では
\(V[O_2 ローレンツ] = \frac{V_1 + V_2} {1-\frac{V_1 V_2}{c}}\)

ですので、この\(V[O_2ローレンツ]\)を使って、運動量保存則を見ていくことになります。

ローレンツ変換で運動量が保存されない!?

さて、ここで計算しやすくするために、次のようにします。
\(K_0\)も\(K_1\)も静止しているとして、これを慣性系\(K\)と言い換える。
慣性系\(K_2\)は\(K\)に対して\(x\)軸方向に\(-V\)で移動しているとして、これを慣性系\(K’\)と言い換える。
\(K\)の\(x\)軸上のどこかに物体\(A\)が、\(K’\)の原点に物体\(B\)があり、ある時間ののちに物体\(A\),\( B\)が衝突する位置関係にある。

そして、物体\(A\)と\(B\)についてそれぞれ以下の様になるとします。
・\(A\), \(B\)両方とも質量は\(m\)とする。
・\(K\)から見た時、\(A\)は\(x\)方向に\(V\)で動く。
・\(K\)から見た時、\(A\)と\(B\)は衝突した後、合体して停止する。

これ様子を\(K\)から見たときの運動量の変化は
衝突する前の\(A\)の運動量\(p_A\)の大きさは\(mV\), 同じく衝突する前の\(B\)の運動量\(p_B\)の大きさも\(mV\)。
ただし、方向が正反対です。
よって\(A\)と\(B\)の運動量の和は\(0\)。
衝突した後は、停止するので運動量は\(0\)。
よって、衝突の前後で運動量は保存されています。

この現象を\(K’\)から見ると
・\(A\)は\(x\)方向に\(2V[ローレンツ] = \frac{2V}{ 1-\frac{V^2}{c}} \)で進み、\(B\)は静止している。

・衝突後、合体して\(V[ローレンツ] = \frac{V + 0}{1-\frac{V\times0}{c}} = V\)で進む。
となります。
(\(V_1 = V\), \(V_2 = 0\)ですからね)

そこで、この衝突前後で\(A\), \(B\)の運動量についてみてみます。
衝突前については、Aの運動量\(p_A\)は\(m\frac{2V}{1+\frac{V^2}{C^2}}\)です。
同じく、\(B\)の運動量\(p_B\)は\(0\)です。(止まってますからね)
\(p_A+p_B = m\frac{2V}{1+\frac{V^2}{C^2}}\)
です。
一方、衝突後は、\(2mV\)です。
衝突前と衝突後で運動量は
\(m\frac{2V}{1+\frac{V^2}{C^2}}\) と \(2mV\)
保存されていません。

\(K’\)から見た\(A\), \(B\)の運動量が保存されるためにはどうすればよいのか?

”運動量が保存されていません”、で済ませるわけにはいかないのです。
運動量保存則は、いろいろなところ(法則)顔をだします。
もし運動量保存則が成立しないのならば、それらすべてを修正しなければならないんです。

しかも、そのいろんな法則は、今のところうまくいっているので、運動量保存則を変えつつそれらの法則も成立する、というのはかなり難しいんですね。
そんなことを考えるくらいなら、”今、この成立しないように見える式が、成立するにはどうなるか”を考えた方が建設的と言えます。

まあ、こんな風に考えたかどうかはわかりませんが、できる事なら、”と”の左と右が同じになる方法を考えた方がいいでしょう。
既に、位置(つまり速さ\(V\)に関係するもの)については、ローレンツ変換という新しい考え方を適用しました。
ならば、ここでは質量\(m\)について何か考えてみたらどうでしょう。

質量\(m\)が速さ\(V\)に関係しているとすると。

\(A\)の質量と\(B\)の質量が違うということになりますね。
\(A\)の速さは\(K_0\)から見たときに\(V\)、\(B\)の速さは\(K_0\)から見たときに\(-V\)。
\(K’\)から見たときは、\(A\)の速さが\(\frac{2V}{1+\frac{V^2}{C^2}}\)、\(B\)の速さが0です。
\(A\)の速さをいちいち書くのは面倒なので、\(v\)とすると、\(v=\frac{2V}{1+\frac{V^2}{C^2}}\)になります。
さて。

とりあえず\(K’\)からみた\(B\)の質量を\(m_0\)としてみます。
でもって、\(K’\)から見た\(A\)の質量が\(m(v)\)になります。
さらに合体した後の物体\(AB\)は、\(K’\)から見た速さが\(V\)なのでその質量は\(M(V)\)となります。
わざわざ大文字の\(M\)を使っているのは、合体しているからですね。

こうした後に、例の式の”と”を、”\(=\)”に変えて等式を作ると、
\(m(v)\frac{2V}{1+\frac{V^2}{C^2}} = M(V)V\)
この式で、両辺に\(V\)があるのでとりあえず両辺\(V\)で割ってみます。
\(m(v)\frac{2}{(1+\frac{V^2}{C^2}} = M(V)\)
ここで、仮定としてなんですが、\(M(V) = m_0 + m(v)\)としてみます。
これを代入して、\(m(v)\)でその式を解いて、チョメチョメしてやります。
そうして速さ\(V\)の時の質量を、動いていないときの質量\(m_0\)と速さ\(V\)で表す式を出すのです。

その結果
\(m(V) = \frac{m_0}{\sqrt{\frac{1-V^2}{c^2}}}\)
と表せます。
この時の\(m_0\)を静止質量といいます。

この式から言えるのは、
1. 「早く進む物体の、見た目の質量は増大する」
2. 「速さが\(c\):光速になってはならない」
ということです。

2. は0で割ってはいけない、という意味です。
\(V=c\)となると\(m(V)\)の分母が\(0\)になりますからね。

1は、よく言われるように”速く動くと重くなる”と言えれば楽なんですけどね。
単純にそういってはいけない様でして。
私の感覚としても、”止まってる”、”動いている”と言うのは、立場で違うだろうというのがあります。

例えば、慣性系\(K\)に対して静止している物体\(A\)について、慣性系\(K\)に対して速さ\(V\)で動いている慣性系K’から同じ物体\(A\)を見るとします。
\(K\)から見ると\(A\)の質量が質量\(m_0\)だとすると、\(K’\)から見ると\\frac{m_0}{\sqrt{1-\frac{V^2}{c^2}}になるわけです。
なんとなく、観測者によって、質量が変わるのでしょうか?。

さらに慣性系\(K’\)の中で静止している人にとっては、慣性系\(K\)の方が動いていると感じるわけですね。
一体、静止しているのは\(K\)と\(K’\)のどちらなんでしょう。
となると、物体\(A\)の静止質量はどちらから見たものをいえばいいのでしょう?

ただ言えることは、\(K\)の中でも\(K\)の中’でも、物体\(A\)が”静止している”ときの質量が\(m_0\)で等しいということですね。

そして、物体\(A\)の質量がこれより小さくなることはない(物体\(A\)である限りは)、ということです。

色々調べてますと、「速さが大きくなると、運動量の増え方が大きくなる」ということかもしれません。
普通は速さに比例して運動量が大きくなりますが、速さの増え方より大きく運動量が増える、とみるようです。
う~ん、なんだかわかったようなわからないような。

どうもこの問題、根っこが深いので、もっと先の方で、4次元的な考え方を導入した後で戻ってくるのが良いかもしれません。
とりあえず、今ここでは、”見かけの質量”と呼ぶことにします。
(注意:この呼び方はこのサイトだけで通用します。他では使わないほうが良いでしょう)

さて、速さで変わる見かけの質量と言うのを導入したところで、次の項から運動量を考えていきましょう。

\(p = m(v)v\)なので、
\(=\frac{ vm(0)}{\sqrt{\frac{1-V^2}{c^2}}}\)
これをつかってエネルギーを考えるんですね。

使う式は
\(F=mα = \frac{dp}{dt}\)

\(W=F・x\)
(\(W\):仕事 \(F\):力 \(x\):距離)
です。

ちなみに、仕事はエネルギーと同じ意味を持ちます。
この続きは次の回でお話ししましょう。

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