力積は力 x 時間なのですが、この”時間”は微小時間だったりします。

まあ式的には、別に微小でなくてもいいと言えばいいのですが。
考え方として、力積における時間は微小なものになります。
というのは、出所に理由がありましてね。
とりあえず、時間が微小時間という事で\(\delta t\)を使うという事で、
力積 \(= F \Delta t\)
となります。

ちなみに復習ですが、「時間」と「時刻」という2つの時を表す言葉がありました。
その関係は「時間とは時刻と時刻の間の長さのこと」でしたね。
あと、小さな時間は\(\Delta t\)という表し方をしました。
それでもって、小さな何か、つまり \(\Delta\)<何か> をもっともっと小さくして、ほとんど0にした時の物を \(d\)<何か> としていました。
そしてこの、\(d\)<何か>で割るという操作を「微分」と呼んでいました。

で、先走ったことを話していたのですが、「△△を〇〇で微分」と言うのは「△△の微小な〇〇変化
に対する変化量」というものでした。
微小でないときの「△△の〇〇変化に対する変化量」と言うのは、<△△の変化量>/<〇〇の変化量>でした。
微小な時でも同じように考えて、「△△の微小な〇〇変化に対する変化量」つまり「△△を〇〇で微分」は、\(d\)△△/ \(d\)〇〇 となります。

さらにさらに先走ったことも言っていて、位置の時間微分は速度(向きが関係なければ速さ)、速度の時間微分は加速度としていました。
向きを考えずに式で表すと、位置:\(x\)、時間\(t\)、速さ:\(v\)、加速度\(\alpha\)としたときに、
\(\frac{dx}{dt} = v, \frac{dv}{dt} = \alpha\)
となります。
もちろん、\(d\)が\(\delta\)になっても同じで、
\(\frac{\Delta x}{\delta t} = v, \frac{\Delta v}{\Delta } = \alpha\)
となります。
最後の所だけは先走っていないのですが、ここまで思い出したうえで、力積というものがどうやって出てきたのかを考えていきます。

結論を先に言っておくと、出所は例の究極の方程式「運動方程式」なんですね。

運動方程式の両辺にΔtを掛けると、力積と「質量×速さ」が出てきます。

おさらいですが、運動方程式は\(m \alpha = F\)です。(もう、それぞれの文字についてはいう必要はありませんよね?)
等式なので、左辺と右辺を入れ替えてもいい訳で、むしろそっちの方がこれからの話の展開には都合がよいので、出発の式は
\(F = m \alpha\)
としておきます。

この両辺に\(\Delta t\)を掛けると、
\(F \Delta t = m \alpha \Delta t\)
となります。
左辺に力積が出てきました。

右辺を見てみると、ある物体について考え続けるという場合、質量は時間変化しないので\(m\)は定数扱いでいいでしょう。
残りは<加速度>\(times\)<時間>ですね。
先ほどのおさらいで、<加速度> \( = \frac{\Delta v}{\Delta t}\)ですから、これを代入すると
\(m \frac{\Delta v}{\Delta t} \Delta t =m \Delta v\)
となります。

こうして等式
\(F \Delta t = m \Delta v\)・・・①
が出てきました。

Δvというもの意味は「速さの変化量」。変化量であれば<変化後の量>-<変化前の量>と分けられるはず。

\(F \Delta t = m \Delta v\)・・・①
右辺にある\(Delta v\)に注目します。
これは「速さの変化量」という意味でした。
つまり、「何から何に速さが変わった」という事。
当然、これは「\(De;ta t\)の間に変わった」という事と同じ意味です。

ちょいと話をまとめますと、
1. 最初、速さは\(v_0\)でした。
2. \(\Delta t\)後に\(v’\)になりました。
3. 速さの変化量は次の式になります。
\(\Delta v = v’ – v_0\)
という事で、これを①に代入して変形すると、
\(F \Delta t = m \Delta v = m(v’ – v_0) = mv’ – mv_0\)

ここで、\(mv’ – mv_0\)に注目します。
これ、「<質量>×<速さ>の変化量」という形になっています。
ここで、この<質量>×<速さ>に名前を付けておきます。
名前は「運動量」で、\(p\) (\(kg \cdot m/ s\)です。

ちなみに、力積の単位は\(N \cdot s\)ですが、\(N = kg \cdot m\)なので、\(N \cdot s = kg \cdot m /s\)となり、左右は一致します。
こうして
「力積は運動量の変化量」
という事がわかりました。

ここで運動量というものが出てきましたが、運動量が活躍するのは複数の物体が関係する場面です。

なぜ?といわれるとアレなんですが、実際そうなっているので仕方ないと思ってください。
あえて何か理由を考えるとしたら、「微小時間の事を考えるとすると、衝突・分裂が絡むことが多いから」でしょうか。

それはさておき、こうなってくると複数の物体が絡んでいるグループというものに名前を付けておく方が便利です。
なので名前を付けました。
「物体系」です。

この物体系と言うのを考えたことで、内と外の区別ができました。
物体系の外から働くまたは外に働く力を「外力」、内側だけで働く力を内力と呼びます。

運動量(力積)、物質系、外力、内力、ここまで一生懸命準備してきたのはなぜか?
それは、(力学的)エネルギー保存則とは別の、別の保存則「運動量保存則」を使いたいから。

ということで、次回は「運動量保存則」についてみていきます。

運動量保存則、かなり強力な武器です。
もちろん使える場面と使えない場面をきっちり判断することが必要です。
その辺は、(力学的)エネルギー保存則と同じですね。

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