サイエンスカフェ 「樹から下りたサル、地上を歩く」 大阪大学総合学術博物館待兼山修学館3階にて

不思議大好きの、はしびろこうです。
昨日、初めてサイエンスカフェというものに行ってきました。
場所は、大阪大学総合学術博物館待兼山修学館、講師は、大阪大学の中野良彦先生でした。

内容は、これまでに分かってきた「ヒトがどのように進化してきたか」、と、そのちょっと先の、先生が行った研究についてです。
それでは大まかな流れから始めます。

ヒトってなんだろう?

と、いきなり哲学的な入り方ですが、皆さん、”ヒトとは何か?”ってズバッと言えますか?
「火を使う」、「道具を使う」、「脳が発達している」、「社会を形成する」・・・
色々あると思いますが、一応、その根っこは「二足直立歩行をする」だという見解になりつつあるようです。
例えば、上の例でいえば、「火を使う」のは「道具を使う」の延長で、「道具を使う」のは「2足直立歩行をする」ことで、前足が手になったから、とか。
「社会を形成する」のは「脳が発達している」ことで抽象的な概念を持つようになったことが原因で、「脳が発達している」のは「2足直立歩行をする」ことで、重い脳を安定して支えることができるようになったから、というところでしょうか。
実は、サルから類人猿へ、そしてヒトへと変化する途中で、キーとなった事象が4つあるようです。
「2足直立歩行」、「地上生活」、「集団生活」、「大脳の発達」ですね。
これらがどのような順番であったかは、諸説紛々で、それこそ百花繚乱状態のようです。
例えば、今私が即興で作った仮説(なので、ほぼ確実に主流ではありません)を挙げてみますと、
・「大脳が発達したこと」で「集団生活」を社会的に営むようになった。
・「集団生活」は樹上では不便なので、「地上生活」に移行した。
・「地上生活」では「2足直立歩行」の方が遠くまで見渡せるので、そのように進化した。
なんて具合ですね。
中でも、「2足直立歩行」と「地上生活」はどちらが先か、決め手はなかったんです。
ただ、最近まで最有力と考えられていた説がありました。

イーストサイドストーリー ヒトの祖先は、やむなく地上に降りた ?(従来の説)

これは、簡単に説明すると
・人類の祖先がアフリカにいたころ、大地溝帯での造山運動が盛んになり、その東側が乾燥した。
・乾燥したことで、その地域の森林が少なくなり、やむなく地上生活に移行した。
・地上生活で生き延びるために2足直立歩行を獲得した。
という説です。
一時はかなり有力で、最近まで私はこの説を信じてました。
ところが、造山運動により大きな山ができたのは、そのころ考えられていたよりもずっと最近で、約400万年前であったということが分かりました。(昔は800万年前くらいといわれてました)
ヒトが2足直立歩行をしたのは、600万年前より前のことと考えられていて、それに間に合わないんです。
しかも、600~700万年前のヒトの祖先(すでに2足直立歩行をしていたことが分かっています)の住んでいた環境が、湿潤な環境(それは魚やワニの化石が出たことでわかりました)だったことが分かり、乾燥が2足直立歩行の原因となったのではないことが分かったのです。
ちなみに、この説を提唱していたイブさんは、2003年にこの説を撤回しています。
う~ん、私も情報が遅かったものです、反省。

それじゃあ、いつ・どこで・どうやって・(なぜ)2足直立歩行を獲得したのか?ラミダス猿人の発見

そうなんです、いったん振出しに戻ったかのように思われたこの論争、ラミダス猿人の発見により、”いつ(ごろ)”、”どこで(どんな環境で)”、はわかってきました。
ラミダス猿人は、580万年~440万年前ころにいたようです。
また、足の指が”物をつかめる”ようになっていたんです。
なので、樹上生活をしていたと考えられます。
つまり、ヒトは”樹の上”にいるときから、2足直立歩行を獲得していた、ということですね。
ちなみに、”なぜ”そんな風になったか?、はわからないそうです。
物を運ぶため?木の実をもぎ取るため?色々考えられるのですが、決め手がないとのことでした。

じゃあ、”どうやって”はわかっているの? 先生の検証したちょっと先の話

まあ、”どうやって”についてズバリこたえられる段階ではないのですが、先生は
・木に登る行為が、2足直立歩行を獲得する道筋になったのではないか?
と考えています。
というのも、木登りというのは、まっすぐに立った状態でなければできない行動ですから。
それで、サルの木登りの方法に3つのパターンがあることが先生の研究で分かったそうです。

  1. 4足歩行型
    ニホンザルなどがこの型です。
    前足(=手)、後ろ足を均等に使って木に登ります。
  2. 懸垂運動型
    クモテナガザルなどがこの型です。
    前足(=手)の力を主に使って木に登ります。
  3. 下肢利用型
    チンパンジーなどがこの型です。
    後ろ足の力を大きく使って木に登ります。

この中の、3. 下肢利用型から、2足直立歩行が発展していったのではないか、と推測されているのですね。
確かに、足の力が十分強くなったのなら、何も4本足で歩かなくてもいいわけですし。
樹の上といっても、えさである木の実や葉っぱを取ろうとしたら、2本足で立ち上がったほうがやりやすいでしょうから、いちいち4本から2本、そしてまた4本という具合に歩き方を変えなくてもいいでしょうからね。
さらに、2本足だけで移動してしまえば、もぎ取ったえさを手(=前足)に持ったまま移動できますし。
ただ、私が考えるに、今樹上で2足直立歩行しているサルっていなさそうですよね。
きっと、一度は樹上で2足直立歩行を獲得したとしても、他の4足歩行のサルに競争で負けたのかもしれません。

おまけ 類人猿とサルの見分け方

おまけですけど、私が講演の後の質問タイムで聞いた情報を一つ。
・サルと類人猿の見分け方は?
>歯を見るといいそうです。
サルは切り刻むタイプの歯で、類人猿はすりつぶすタイプの歯なんだそうです。
ちなみに、類人猿とヒトの違いは、頭蓋骨の下の、背骨(神経)が通る穴の位置、だそうです。
類人猿は後ろ寄りで斜め下に向いているのですが、ヒトは真下にまっすぐ開いているそうです。(ヒトは2足直立歩行しているってことですね)

さて、初サイエンスカフェでしたが、なかなか楽しいイベントでしたね。
今度は2/17の大東サンメイツで行われる”AIは人間倫理を理解するか?”に行こうと思ってます。

それではまた、次のおもしろ不思議でお会いしましょう。

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