岡山・倉敷の旅2

岡山に続きまして、倉敷を訪れました。
今回は大原美術館を中心に美観地区を歩きました。
あいにくの雨だったのですが、そんなことは気にならないくらい充実していました。
今回の目的はエル・グレコら西洋美術と、岸田劉生ら日本の洋画家の実際の絵を見ることでした。
ところがどっこい、ほかにもいろいろと興味深いものがありました。
その中でも、大原美術館を作ったといってもよい画家・児島虎次郎さんの絵を見ることができたのは有意義でした。
まず、彼の画力にびっくりでした。
さらに驚いたのは、彼が描く女性がなんと美しく微笑んでいるかということ。
もちろん微笑んでいる絵ばかりではないのですが、彼が渡欧時代に書いた絵のひとつ「姉妹」でお姉さんのほうの満面の笑みには、それはもうぐっと来ました。
私はかつてこれほどはっきりとした笑顔を描いた絵を見たことがありません。
私の持論のひとつに”喜劇は悲劇の何百倍も難しい”というのがあります。
人が死ぬストーリーで人の心を動かすのなど簡単です。
なぜなら、人の死を悲しむのは、ほぼ当然といってよい心の動きだから。
でも、面白さ・おかしさで人の心を動かすのはとっても難しい。
ある人にとって面白い話でも、別の人にとっては不愉快なこともある。
実際、テレビで観客が大笑いしているのに私はぜんぜん笑えないことも多いですから。
もしかすると、絵画の中の女性がうつむいていたり、暗い表情なのはそれと同じなのでしょうか。
彼が書いた、ある女性の気持ちよい笑顔は、私にそんなことを思わせました。
次に彼の集めたコレクション(=大原美術館の絵画たち)の内容です。
確かに、有名な画家の絵がいっぱいです、が、ほとんどのものが代表作とはいえないものです。
なぜか?
その真意は憶測するしかありませんが、ひとつには個人のコレクションであることだと思います。
当然国立美術館ほどの財源はなかったことでしょう。
ただ、もっと作品数をしぼって、代表作(に近い)絵を数点買うということもできたはず。
では、なぜそうしなかったのか。
彼には”使命”があったのです。
「日本にいる、西洋画に触れることのできない同志達に、西洋画を知る機会を届けたい」、そんな使命が。
もちろん、コレクションを児玉に一任してお金を出した大原孫三郎は立派です。
しかし、大原を説得し、彼の期待と信頼に十分答えたコレクションをそろえた児玉も立派でした。
彼の思いはきっとその後の日本美術の発展に寄与したことと思います。
その他にも岸田劉生、小出楢重ら、日本洋画の黎明期を担った画家の絵を生で見ることができたのは非常に楽しい経験でした。
また、棟方志功の版画、ジャコメッティ、マイヨールの彫像など、わくわくの連続でした。
また、紅葉の季節にでも後楽園と絡めて行ってみたいと思っています。
ところで、旅の楽しみの一つに「グルメ」がありますよね?
今回はそれも楽しみにしていたことで、ありがたいことに岡山県はその期待を裏切りませんでした。
それについては、また次回ということで。

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